サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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「県東部地域合併アンケート調査」
 県東部の活性化のために、地方分権の受け皿づくりを進めているサンフロント21懇話会(代表幹事・岡野光喜スルガ銀行社長)はこのほど、県東部の全市町村長と全議員、一般住民(有効回答千人)に対し、「合併に関するアンケート調査」を実施した。その結果、一般論として市町村合併が必要としている市町村長は九割以上、市町村議員は八割に上った。一方、「合併が必要」と感じている住民は四割弱で「合併が必要でない」(三割弱)を上回っているものの「どちらともいえない」「分からない」が合わせて三割強に達し「合併が地域にとってプラスになるのか、マイナスになるのか」判断に迷う住民がかなりいることを裏付けた。財政難で効率的な行政展開が不可欠、といわれる中、市町村長、議会のリーダーシップが問われる内容とも言えそうだ。    
風は東から
[東部発21世紀へのメッセージシリーズ5]
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「合併推進」に住民戸惑い 首長、議員は「必要」が大勢
前向きな住民は四割弱
 「合併が必要」と答えた首長は93%、議員は80%。住民で合併が必要だとする回答は37%にとどまり、「必要ない」は29%だった。
 合併の時期については首長の二人に一人が「十分その時期だ」あるいは「それなりの時期に来ている」ととらえており、議員では半数近くが合併の時期に来ていると考えている。その理由として「境目はあるが日常生活の範囲が市町村を越えているから」(43%)、「市町村に今後諸環境を充実する力を持ってほしいから」(41%)が上位に挙がった。
 地域別に「十分その時期」「それなりの時期」と考えている割合をみると、駿南地域では沼津市78%、裾野市43%に対し、郡部38%。駿北地域では御殿場市73%に対し、郡部は42%と下回っている。反対に田方地域では三島市(31%)より郡部(41%)が上回っている。
 一方、合併の時期について住民の意識をみると「できる限り早く」が15%、5〜10年以内の「近い将来」が18%、「十年以上も先」は8%、「いつとは言えない」「分からない」が55%で、大半の住民は合併の時期まで考えておらず、ここでも首長らと温度差がある。

 市町村がより大きく強い行政能力を持つ必要があるかの問いではすべての首長が必要と答え、議員も87%が必要との認識を示した。方法として「他の市町村と連携・共同する」が首長・議員で51%と半数を超え、「合併する」(30%)を上回った。
 合併を論議する場について、首長の43%が「市町村長と議会の合同会議」と考えているのに対し、議員の四割が「市民が直接、自由に参加できる会議」を望んでいる。合併を議論する上で重要な問題は「合併の仕方」42%と最も多く、以下「自然・都市環境の整備」(15%)、「公共施設の整備」(8%)の順。首長、議員とも上位三項目は同じだが、「市町村の名前」「役所の位置」を挙げた首長の比率は議員に比べて高かった。
 最終的に目指す自治体の規模については市部と郡部では方向性の違いが見られた。沼津市、三島市、裾野市は「人口三十万人以上の中核市」と「二十万人以上の特例市」を挙げる回答が多く、南伊豆、西伊豆、土肥・戸田、中伊豆地域では「合併特例法による四万人以上の市政施行」、熱海伊東、駿北地域は「福祉事務所などの権限を持つ十万人以上の市」がトップだった。



満足度の高い自然環境
 今住んでいる市町村に生活環境を充実させる能力があると思っている住民は32%、ないと思う住民は31%とほぼ同数。現在住んでいる市町村の満足度について、満足度が高かった順に自然環境(67%)、住環境(57%)。反対に交通、福祉環境の満足度は総じて低かった。
 今住んでいる市町村の人口規模については住民の約半数は「ちょうどよい」と思っており、「小さい」と感じている住民は二割にすぎなかった。
 国や県が合併を指導し強く求めていくことを支持する住民は19%、支持しない住民は42%。首長・議員では国や県が「自主性を侵害しない範囲で指導的にかかわる」が57%、「中立的立場で仲立ち役として」が21%だった。住民、首長・議員とも合併は市町村主体で進めるべきだとの考えが主流。国・県には財政的援助・支援と権限の移譲・付与を望んでいる。
 今回の調査結果について、県の広域行政推進研究会委員長の小櫻義明氏(静岡大教授)は「明治、昭和の大合併とは違い、今回の合併は地方分権の受け皿づくり。合併は手段で、住みやすい豊かな街をつくることが目的。幅広く市民に考えてもらうため、行政や議会のリーダーシップを期待したい」と話している。
 このアンケート結果をもとに、サンフロント21懇話会では地方分権を東部地区の活性化につなげるための方策について、さらに議論を深め、効率的な広域行政の展開を図っていく考えだ。 調査は県東部の28市町村の首長・市町村議員約560人(回答率78%)と駿豆地区4市6町(沼津市、三島市、御殿場市、裾野市、清水町、長泉町、伊豆長岡町、大仁町、函南町、小山町)の住民千人(有効回答)を対象に、八月から九月にかけて実施した。


  “創論”“提言”
「原点に立って考えよう、市町村合併」

大多和 昭二 さん
静岡県総務部理事
大多和 昭二 さん

静岡県総務部理事
大多和 昭二 さん


 市町村合併もまた原点に立って考え、取り組むことなのだ、というのがサンフロント21懇話会が行った県東部地域合併アンケート調査結果に対する私の感想である。
 アンケート結果を大胆に括ると、地域行政の受益者であり負担者である住民は自然や生活環境を充実させる中心は市町村であるとしているが、能力が有るとは必ずしも評価していない。行政の担当者である首長と議員は、能力はあると自負しているものの、より大きな能力を持つ必要性を感じ意欲を持っている。
 能力を持つ方法としては、合併の必要性は首長・議員が強く認めているが合併よりも連携が上位である。時期は住民は分からないのに対し、首長・議員の半数は十年以内と判断しているが、機運は盛り上がっていない。
 合併への期待は効率的な行政運営が最多で、名前より都市環境や公共施設などの整備が重要とし、実を取るが多数派。
 議論の場は首長と議員の合同会議か住民が自由に参加する会議を想定し、結論は首長と議員の話し合いか住民投票と、決定の自主性を主張している。
 この結果は、住民と首長・議員が自治体の原点である「市町村は住民の福祉の増進を図るために地域行政を実施する役割を担っていること」(地方自治法に追加された一条の二)と「最小の経費で最大の効果を挙げること」(同法二条)を十分に理解し、合併は地域で考え、熟度を高めて地域で決めるという基本的な姿勢を持っていることの表れであり、市町村の行政能力を高め分権の実を挙げるために着実に前進することを期待したい。

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