サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
トップ 最新情報 政策提言 活動内容 サンフロント21懇話会とは 飛躍 風は東から

景気低迷による財政難、少子高齢化の進展、環境問題への対応など、効率的な行政運営が急務となる中、県東部でも、沼津、三島を中心とした3市5町の具体的な広域都市づくり研究が進んでいる。東部地区の広域都市づくりをテーマに掲げるサンフロント2懇話会(代表幹事・岡野光喜スルガ銀行社長)は、今年月に東京都の田無市と保谷市が対等合併して誕生した「西東京市」をケーススタディとして取り上げ、大多和昭二静岡県総務部理事(地方分権担当)と同懇話会シンクタンクTESSの大石人士氏が同市を訪ね、担当者から合併までの経緯、将来の展望などを聞いた。
風は東から
 
バックナンバー


住民要望を行政が先取り 市長がリーダーシップ発揮
西東京市企画部の斎藤治参与(右)・清水誠主任(左)
西東京市企画部の斎藤治参与(右)・清水誠主任(左)
対等合併
「西東京市」誕生へ
 田無、保谷両市の合併協議は「少子高齢化社会に対応するには、合併で財務体質を強化し、行政の効率化を図ることが不可欠」とする行政の主導でスタート。両市長が強力なリーダーシップを発揮し、議会と両輪となって進めてきたことが、任意の合併推進協議会発足からわずか2年半で合併に至った要因といわれる。
 住民の意見を合併に反映する「市民意向調査」は全国でも初の試みで、各方面から注目を集めた。取材をした大多和理事は「住民の要望を行政が先取りした先進的なケース。新市名、新庁舎の位置など合併には都市間の確執が避けられないものだが、ここまでスムーズな合併は珍しい」と評価した。


■”平成の合併“
 田無、保谷両市が合併で目指したものは「行財政改革」。政令市昇格を目指したものでも、国家プロジェクトなどの大規模開発を行うためでもない。これが新しい形の”平成の合併“といわれるゆえんだ。田無市を保谷市が包み込むような凹型地形ゆえの不便性を解消するとともに、地方分権に対する受け皿づくり、本格的な少子高齢化社会に備えた行財政基盤を確立する必要性から両市は合併への道を選択した。合併効果は十年間で百八十九億円と試算され、その財政的余力で行政サービスの向上を実現するシナリオを描く。


説明を受ける大和田氏
説明を受ける大和田氏
前へ進める
工夫
 新市名、新庁舎の位置、合併方法をめぐって合併論議が遅々として進まないケースが多い中、両市の合併は足掛け四年、任意の合併推進協議会発足からわずか二年半というスピードだった。合併を公約に当選した両市長がけん引力となったのは言うまでもないが、田無市・保谷市合併協議会事務局長を務めた西東京市企画部の斎藤治参与は「過去に二回、合併話が持ち上がっては消えた経験から、合併協議をレールから外さず、 前へ進めるための仕掛けをした」という。法定の合併協議会の議事運営において「全会一致を原則とし、意見が分かれた場合は三分の二の賛同をもって議事を進める」という申し合わせがその一つ。また「合併協議会は月二回開催」とし、合併期日へ向けて後ろからスケジュールを設定したことも挙げられる。四回目の合併協議会までに、合併方式は対等、新市名は公募方式とすることが確認され、新庁舎は合併の目的からも、新たに建設はせず、現行の市庁舎をそれぞれ有効活用することが決まった。


合併の是非
を問う
 市民参加の具体的な方法として、市民代表者による「新市将来構想策定委員会」、ワーク ショップ形式でまちづくりを考える「21世紀フォーラム」、「市民説明会」を開いた。究極は合併の是非を問う「市民意向調査」。「どちらかの市で反対票が過半数になれば合併は白紙に戻す」と合併協議会長の末木達男元田無市長が明言したことから、調査は事実上の”住民投票“となった。対象は十八歳以上の約十四万八千人。合併の賛否や新市の名称、新市に期待する施策の方向性について投票してもらった。結果は合併賛成が多数になり、両市の合併協定書調印の運びとなった。意向調査を担当した西東京市企画部の清水誠主任は「通常の選挙でも投票率40%。義務のない今回の意向調査は30%に満たないのではと懸念していたが、44.2%と住民の関心度は高かった」と振り返った。


西東京市田無庁舎
新庁舎を設けず、旧両市庁舎を有素行活用-西東京市田無庁舎
これからの
課題
 市民意向調査の結果を受けて、最多得票を得た「西東京市」が新市名に決まり、一月二十一日に新市が誕生した。ところが、初代の市長を決める市長選では旧両市長がそれぞれ出馬。合併実現のために手を取り合ってきた旧市の代表同士が一転、新市長の座を争うことになった。二月十八日の投票、即日開票の結果、元保谷市長の保谷高範氏が元田無市長ら三候補を破り当選。保谷氏は「対等合併して誕生した市なので、合併効果がでるようなモデル都市にしていきたい」と抱負を語っているが、新市を二分した、し烈な戦いだっただけに、これからどう西東京カラーを出していくのか、合併効果が期待される。


  “創論”“提言”
何のための合併か、目的を明確に 〜首長のリーダーシップと市民の参加が不可欠〜

大石 人士 氏
大石 人士 氏

サンフロント2懇話会/シンクタンクTESS研究員
大石 人士 氏(静岡経済研究所副部長)


 市町村合併には、当然ながらメリットもデメリットもあり、また新市の名称や庁舎位置などの検討が入ってくると、合併論議は途端にスローダウンする。ここで重要となるのが、合併の必要性や目的が明確になっているか、それが住民に十分理解されているかであり、それを可能にしていくのが首長のリーダーシップであろう。
 抽象的な合併必要論を繰り返していても、議論は進展しない。その合併は、政令市や中核市を目指すのか、ビッグプロジェクトの実現を目指すのか、あるいは厳しい財政下で行財政改革を推進するのか、さらには社会面・経済面から見た地域的一体性など、具体的な合併の姿とその効果を住民に明らかにしておく必要がある。
 その上で市町村合併をスムースに推進するには、開かれた議論の場づくりと市民の参加が不可欠である。
 田無・保谷両市の合併協議の過程では、合併の必要性と効果の検証や確認は専門的見地から協議会が行ったが、新市建設計画の基礎となる新市将来構想づくりは市民代表が中心となって検討した。そこには、行政と市民との二人三脚の姿がある。また、住民投票で単に合併の賛否を問うのではなく、新市に期待する施策、どんな新市名にするかなど、投票基準を十八歳以上にまで拡大した市民意向調査という形式で実施している。
 県内では静岡市・清水市が合併協議会を設置し、県東部でも広域都市づくり研究が進んでいる。また静岡県は昨年十一月、「市町村合併推進要綱」を公表した。地方分権時代を迎え地方自治のあり方が大きく変わろうとしている今、真の豊かさを求めて、まちの将来像について真剣に議論を始めなければならない。

■企画・制作/静岡新聞社営業局

▲ページトップ
入会案内お問い合わせ事務局案内リンク Copyright(c) SUNFRONT21.�ALL RIGHTS RESERVED.