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全国で高まるスポーツ合宿誘致 |
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■「この一帯は日本一のスポーツ合宿地になる可能性がある」と語るニチレクの田渕社長(右)
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読売巨人軍の宮崎キャンプが50年目を迎えた宮崎県。プロ野球やJリーグのキャンプ地として全国的に認知されている。昨年春季の経済効果は県の試算で125億円とされている。北海道の網走市は行政が誘致を主導。夏には実業団ラグビーチームをはじめ約1000人が訪れ、経済効果は5億2000万円。ラグビー合宿で有名な長野県菅平は芝生のグラウンド6面、公認陸上競技場を完備した「サニアパーク」を整備。近年はサッカー、陸上競技を含む年間約1300チームが訪れる。
県内でも島田市が大井川沿いにマラソンコース「リバティ」を整備し、実業団の陸上長距離チームなどが訪れている。同市はスポーツ合宿誘致促進事業を立ち上げ、電気自動車の貸し出しや高校・大学生には宿泊補助なども行っている。
県東部も伊豆市の天城ドームで全日本ソフトボール女子チームが合宿するなど、プロ・アマを問わず全国からトレーニングに訪れる。特に、地の利がよく、夏涼しい北駿地区はスポーツ合宿の適地として一部関係者から注目を浴びている。
関西でスポーツ合宿を多く手がけるニチレクの田渕和彦社長は「合宿は夏場が中心。暑い時期に涼しい場所で、かつ、標高が高く酸素が薄い場所でトレーニングすることで練習効率が高まる」と環境面の優位性を挙げる。首都圏に近く、日本を代表する富士山のふもとで、夏涼しく場所によっては標高1300メートル以上の高地トレーニングができるところは日本全国どこを探してもなかなかない、という。 |
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口コミで合宿人口拡大。馬術場を起爆剤に−御殿場市 |
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■オリンピック馬術強化拠点に認定された御殿場市営馬術スポーツセンター。富士山を望む立地の良さから利用客が口コミで広がる
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御殿場市は、男子六大学対抗陸上競技選手権大会開催をきっかけに、各大学の陸上競技合宿が行われるようになり、その関係で北京オリンピック前には女子走り幅跳びの池田久美子選手、男子棒高跳びの沢野大地選手らが練習に訪れている。同市社会教育課の湯山益栄課長は「富士山を眺めながらスポーツができるのは大きな魅力。景観とアクセスの良さ、空気、水がいい、と口コミで合宿希望が増えている」と語る。さらに利用の拡大を図ろうと昨年、地方における国際的競技会などが可能な第2種公認競技場として3回目の更新を実施した。
合宿で訪れる団体は市内の青少年交流の家や旅館・ホテルを利用する。青少年交流の家の宿泊者数だけでも年間70万〜80万人と、市の人口の約10倍。食費とシーツなどの実費だけで宿泊費がかからないため、格安の料金が魅力となって学生を中心に人気が高い。
また、夏場は市内の旅館が学生の合宿を誘致することも多く、宿泊者に代わり旅館が運動施設の予約を取るなどのサービスを実施している。最近では、アウトレット人気やF1日本グランプリ開催の影響でビジネスホテルも相次いで開業した。
こうした中、今年5月には市営馬術スポーツセンターがオリンピック強化のためのナショナルトレーニングセンター馬術強化拠点施設に認定された。同市は馬術場だけでなく屋外競技6種目の競技場の配置図を盛り込んだ基本構想もJOCに提出。市社会教育課の杉山賢吾課長補佐は「一流のオリンピック選手を間近に見られることで、市民一スポーツの振興につながる。もちろん、宿泊や飲食など地元への経済効果は大きい。雇用の関係も出てくるだろう。最終的には御殿場の名前を全国に発信したい」と語る。今後は地元住民と行政で作る検討委員会が県と連携し誘致活動を展開する方針だ。
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サッカーW杯機にスポーツで地域振興−裾野市 |
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■全天候型トラックのブルーが美しい裾野市営陸上競技場
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裾野市は2002年日韓共催のワールドカップで御殿場市とともにウルグアイ代表チームのキャンプ地となった。当時、同市の生き生き政策課長として誘致を進めた鈴木啓久教育部長は「地域振興、国際交流、情報発信、青少年の健全育成をメーンテーマに、3年をかけ誘致した。ワールドカップを契機に裾野市の知名度アップと交流人口の拡大が図れた」と振り返る。サッカー指導者の山本昌邦氏らによる市民向け講演会や、ウルグアイ代表と横浜マリノスとの親善試合なども行い、練習場所の同市運動公園には連日、見物人やマスコミ各社が詰めかけた。
宿泊場所となった「時之栖」は以前から日本代表チームやJリーグ所属チームがよく訪れていた。現在は、主に高校サッカー合宿のメッカとして、多くの強豪チームが利用する。正月の全国大会前には出場チームが調整キャンプに訪れ、練習試合を行ったり、県内の有力チームが試合を申し込んだりと、交流も盛んだ。
また、市運動公園の陸上競技場は第2種公認で交通アクセスが良いため、近隣市町の大きな大会が開かれることもある。最近は総合運動公園で、県内外の大学、高校による陸上競技や野球などの合宿も増えてきた。
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■同競技場で行われる富士裾野高原マラソン
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しかし、市内に宿泊施設が少なく、スポーツでの交流人口は増えつつあるものの、宿泊客の受け入れは近隣の市町に頼らざるを得ないのが現状だ。田渕社長は「合宿は最低でも2泊、3泊、長いと2週間。スポーツ施設は言うに及ばず、まずは宿泊施設があることが第一条件。また、大型バスが合宿地まで入れる道路があることも欠かせない」と合宿を地域に呼び込むための条件を示す。
鈴木部長は「以前から総合運動公園を生かすには周辺に宿泊施設がほしいとの市長の意向もある。2キロ先には温泉施設『裾野ヘルシーパーク』もあるので、運動公園と一体化した活用法も考えたい。こうしたことがファルマバレープロジェクトのウエルネス分野にも合致するのではないか」と語る。22年度に策定する第4次総合計画で、スポーツを切り口に交流人口を増やす具体的なアクションを盛り込みたい考えだ。課題となる宿泊施設については、市が直接つくるのは困難なことから、いかに民間の力を呼び込むか、それに対して市がどの程度支援できるかについて市の行政経営戦略会議などで検討していきたい、という。 |
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地域にスポーツ合宿を呼び込むために |
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■陸上競技ジュニア指導者による放課後陸上教室をはじめ、さまざまなスポーツ教室が開催される御殿場市
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御殿場市も、単なる観光でなく、スポーツ合宿に伴う宿泊、飲食関係の経済効果は大きいとスポーツビジネスの可能性を認める。一方で、「市民ひとり一スポーツ」運動を推進しているため市民のスポーツ熱が高く、ほとんどの運動施設は地元住民の予約でいっぱいなのが現状。今以上に合宿が増えると地元住民にしわ寄せがくるという懸念もある。「時之栖のような、民間のスポーツ施設が導入できればベスト。市は開発行為などでのアドバイスを行うといったバックアップをしたい」(湯山課長)。また、陸上自衛隊演習場の開放地の活用も同市の課題。法規的に開発は難しいのが現状だが、山を切り崩す必要のない「平らな土地」のため、今後はスポーツ関連で活用する方向もあるだろう、という。
県のファルマバレープロジェクトでは、この地域を「健康・スポーツゾーン」と位置づけている。健康文化都市を標榜する裾野市も、生涯スポーツが盛んな御殿場市も、スポーツ合宿地としての条件を高いレベルで備え、交流人口の拡大や地域経済の活性化につながる可能性を十分秘めている。欧米のスポーツ交流先進地では官民のパートナーシップによるスポーツコミッションを組織しているところが多い。また国内でも、行政主導の推進協議会などで、合宿の誘致だけでなく、スポーツ選手に対する食事や医療面までトータルにサポートを行う地域も出始めている。
宿泊場所や運動施設の確保など、北駿地区でスポーツ合宿を盛んにするにはさまざまなハードルがあるが「例えば地元のママさんバレーボールチームと合宿で訪れたチームが交流試合を行えるようなコーディネートができれば、ある程度譲り合いながら地域スポーツの活性化と合宿が共生できる。行政や体協、教育委員会などがその役割を担ってくれれば」と田渕社長は言う。
スポーツという新しい切り口で地域をいかに活性化できるか。高齢化社会が進展する中、長期的には予防医療にもつながる取り組みとして、ぜひ、自治体の積極的なかじ取りを期待したい。 |
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