サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 東部に足りない高次都市機能の一つ「大規模コンベンションセンター」の整備計画が進んでいる。平成10年、沼津駅北口にオープンした展示イベント施設「キラメッセぬまづ」をリニューアルし、その横に会議場やホテルなどが新たに整備される。長い間切望されていたにぎわいの拠点誕生に地域の期待も高まる。5月の「風は東から」は、先ごろ事業者が決定した同センターの整備概要を紹介する。 風は東から
[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ2
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コンベンションセンター整備始まる、東部80万都市のにぎわいの核に
「祭会都市」がキーワード。集客と交流の拠点誕生へ高まる期待
沼津駅北に整備される東部コンベンションセンター(完成予想図)。北側(手前)外観を一面のガラス張りにしたデザインが印象的だ。大和ハウス工業を代表企業に、INA新建築研究所など数社が事業を行う。ホテル協力企業はダイワハウスロイヤルと沼津キャッスル
■沼津駅北に整備される東部コンベンションセンター(完成予想図)。北側(手前)外観を一面のガラス張りにしたデザインが印象的だ。大和ハウス工業を代表企業に、INA新建築研究所など数社が事業を行う。ホテル協力企業はダイワハウスロイヤルと沼津キャッスル

 県と沼津市が進める沼津駅北の東部地域拠点施設「東部コンベンションセンター」の整備計画が決まり、今春設計・施工業者が選定された。県施設の会議場棟や沼津市の展示イベント棟のほかホテル、マンション、駐車場の各棟で構成する複合施設となる。
 事業提案書によると、会議場棟は収容1300人のメーン会議室、400人の大会議室、中小12の会議室を持ち、国際会議や学会、総会などのほかパーティーなどバンケットにも対応できる。
 市の展示イベント棟は展示面積約3800平方メートル。市民の文化創造活動などに活用できる市民交流スペースも併設される。
 また、民間施設としてコンベンションに欠かせないバンケット機能、ケータリング機能を有するホテル(13階建て100室程度)と、中心市街地に定住人口を増やすためのマンション(14階建て80戸程度)が提案されている。全体の開発テーマは「祭会都市」。集客と交流の活発な場となるような、新たな活動やコラボレーションを生み出す仕掛けが随所に見て取れる内容だ。
 沼津市の栗原裕康市長は「すばらしい提案をいただいた。キラメッセぬまづは今でも70%以上の高い稼働率だが、会議場などが加わることで利便性がさらに高まるのではないか」と期待する。県建設部の木村忠幸理事は「経済状況が厳しい中、地方都市でバンケットやケータリング機能を併せ持つホテルや、街中の定住人口増加に寄与するマンションの提案が盛り込まれている点を高く評価したい」と語る。
 すべての施設は2階がテラスや連絡通路で結ばれるため、雨の日の移動が容易で、車道を横断する必要もない。沼津駅や周辺施設との連絡も機能的で利用者に分かりやすい配置だ。北面は全面ガラスファサードで、施設全体の統一感を演出。また、開放的なエントランス広場はシンボル性、利便性も高く、屋上庭園や壁面緑化など景観や環境面への配慮・工夫もされている。
 平成22年度に着工、展示イベント棟は24年度、会議場棟などは26年度供用を目指す。総事業費は168億円で、このうち県事業は64億円、市事業50億円で残りが民間負担となっている。


県、市が連携し管理運営方針を決定。長年使える質の高い施設を
沼津市で行われた技能五輪国際大会には、国内外から22万人もの人が訪れた
■沼津市で行われた技能五輪国際大会には、国内外から22万人もの人が訪れた

 事業計画が決定したことを受け、県と市はそれぞれ施設の管理・運営についての方針を決める作業に入る。県は6〜7月に建設部を中心に、企画部、産業部、県民部など関連部局と検討会を立ち上げる。
 市も管理運営の素案作りに着手する。県、市が密に連絡を取り合えるよう、連絡調整会議も開催する。両施設とも指定管理者制度の導入を予定しており、開業時期はずれるが、一体的な利用の促進、また、防災面、安全面からも同一の管理者を選定したい意向だ。
 施設の魅力だけでなく、富士山や伊豆などアフターコンベンションの魅力を上手に情報発信することも必要だ。木村理事は「管理者には東部地域コンベンションビューロー(※)と足並みをそろえたコンベンション誘致や広報活動を望んでいる。特に、東部のどこに行けばどんなものが楽しめるかといったアフターコンベンションの提案に力を注いでもらいたい。そうすることで、経済波及効果が地域全体に広がれば」と語る。また、本年度中に全国の事例を調べ、例えば岡山の「ママカリフォーラム」のように、場所を貸すだけでなく、設営サポートなどもしっかり行い、かつ割安な料金設定にするなど、利用者が満足するようなサービスのあり方を検討したいという。
 先導的、実験的な施設として平成10年に誕生したキラメッセぬまづはオープン以来、稼働率が70%を超え、東部に高いコンベンション需要があることを証明して見せた。利用の内訳は、市内が47.3%、市外25.8%、県外26.9%。来場者も市内が半数で、残りは市外、県外と、沼津市の施設ではあるが既に広域で利活用されている。沼津市都市計画部の内村博隆部長は「キラメッセぬまづは割安な料金に加え、機材の搬入がスムーズに行えるなど利用のしやすさが高い稼働率につながった。新しい施設もキラメッセの良い部分は残し、音響や照明面での課題を改善し、20年、30年先も十分利用できる質の高いものを造りたい」と意気込む。


東部全域での活用を模索。空港開港をコンベンション誘致の弾みに
 コンベンション機能では中西部に後れを取っていた東部。今後、展示機能に加え会議棟やホテルが加わることで一段と利用が促進される可能性は高い。来月開港する富士山静岡空港も大型コンベンションを誘致する足がかりになるだろう。
 空港を利用するのは国内遠隔地、あるいは海外、特にアジアからの来訪客。富士山に対する関心も高い。内村部長は「今回の提案は、北面をガラス張りにし、ホテルのバンケットも北側に配置するなど、富士山の眺望を重視している。地元にとって富士山があるのは当たり前だが、コンベンション施設としては大変大きな魅力だということを改めて実感した」と言う。さらに、富士山静岡空港から入り、同センターで富士山を見て、東京に行くというルートが定着する可能性にも期待を込める。
 富士山の雄大さを実感できるのはやはり東部であり、伊豆の温泉は多種多様で受け入れ態勢もできている。施設と背後地でのアフターコンベンションをセットにした総合力は首都圏で開催されている国際会議やイベントの誘致も可能にする。
 展示イベント棟は3年後、会議場棟やホテルなども5年後に完成する。沼津駅を中心とした鉄道の高架化など駅周辺の総合整備事業も進む中、新たな街並みが私たちの目の前に現れる。東部の将来像を大きく方向付ける同センターに今後も注目したい。

※東部地域コンベンションビューロー ・・・ 東部6市4町(沼津、三島、御殿場、裾野、伊豆、伊豆の国市、函南、清水、長泉、小山町)の行政、商工会議所、商工会、観光協会で構成する。コンベンションの誘致、開催支援や、アフターコンベンションの提案、広報活動などを行う。



  「施設整備機に、地域の一体感の醸成を」   栗原裕康沼津市長
栗原裕康沼津市長
 昔から交通の結節点だった沼津駅周辺に、東部全体ににぎわいをもたらすコンベンション施設が整備されることは大変喜ばしいと考えています。富士山と伊豆を控えているので、コンベンションに来るだけでなく、温泉に行こう、海で泳いでいこうといった多様な楽しみ方ができます。日本のお客さまはもちろん、外国のお客さまが日本を楽しむ便利な拠点になるでしょう。
 ファルマバレープロジェクトで、医療関係の学会が増えています。施設のグレードが上がれば今後、映画祭の開催なども良いかもしれません。今は主催者のニーズもさまざまです。東部地域コンベンションビューローにとっても、既存の施設に加えて新たなコンベンション施設の整備は誘致活動をする上で大きな「目玉」となるでしょう。ぜひ、足並みをそろえてもらいたいと思います。
 こんなに大きな規模のコンベンションセンターが人口21万人の沼津市にできることは、身の丈に余ると思われる方もいるでしょう。しかし、われわれが目指しているのは東部80万政令市。決して沼津市にあるから沼津だけが使うのではなく、地域のにぎわいの中心機能を整備していくのだと考えています。
 この施設が市長選で公約に掲げた広域合併、政令市を目指す機運の盛り上がりにぜひ結び付いてほしい。道州制が導入されるという予想も大変な追い風になっています。せっかく県が会議場を造ってくれるのですから、東部全体で利用しない手はないでしょう。
 東部コンベンションセンターが東部全体の財産だと認識されるように、名実ともに一つにまとまろう、政令市を目指そうというメッセージをぜひ発信し続けたいと思います。




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