先月末、研究の進ちょく状況の確認と意見交換のため、イチロー・カワチ教授が来日し、岡山大学の土居弘幸教授とともに、裾野市須山地区を視察した。
同市の中でも地域住民の結束が強いとされる須山地区で、両教授は団体職員の渡邉吉己さん宅を訪問。地元でれた野菜の煮物や手打ちそばなどを食べながら、地域の状況について話を聞いた。
須山地区は約880世帯、人口約2400人が住む。市中心部から12キロあまり離れているが、小中学校、幼稚園などの公共施設や、日常生活に必要な商店、金融機関、ガソリンスタンド、コンビニエンスストアなどが一通りそろっている。診療所もあり、急病の場合の対応もできる。
須山浅間神社の祭りが春秋2回、地区の運動会は老人から子どもまで世代間交流の場となる。小学校でのお飾り作りや、田植え、炭焼き体験などは地域のお年寄りが先生だ。このほか夏祭り、地区祭、盆踊りなど、多様な行事が行われている。同市健康福祉部の江川優子保健師は「ほかの地域と比べ3世代同居が多いので、母親の子育てに対する“困り感"が低い」と語る。日帰り温泉施設「ヘルシーパーク裾野」には須山地区からも無料バスが運行され、毎日、お年寄りが利用。仲間とのコミュニケーションを楽しむほか、独居老人の引きこもり防止にもなっている。
活発な住民活動を支える財源は自衛隊や地区内の企業に貸す土地代など。区長会、須山登山道保存会、老人会、青年部、母親クラブなど24団体に配布され、住民自らが企画・運営にあたる。渡邉さんは「自治会費を相当額集めて、地域に還元しているのと同じ。よその地域に比べて恵まれている」と話す。
視察を終えたカワチ教授は「地域活動、ボランティア活動、お祭り、消防団などの興味深い話をうかがい、住民同士の結びつきの強さに感心した。ソーシャル・キャピタルの研究にふさわしい地域」と感想を述べた。
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■昔ながらのいろりを前に生活の様子を聞くカワチ教授
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■子どもたちにお飾り作りを教えるお年寄り |
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