サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 サンフロント21懇話会の提言をきっかけに生まれた展示イベント施設「キラメッセぬまづ」。12年の歴史に幕を閉じ、2年後には新しく生まれ変わる。隣接して国際会議場とホテルが1年後れでオープンする予定だ。4月の「風は東から」は、先月行われた東部地区分科会のパネルディスカッションを取り上げる。パネリストに、沼津市の内村博隆都市計画部長、キラメッセぬまづ運営推進協議会の中山勝会長、MPIジャパンの東條秀彦理事を迎え、新生キラメッセぬまづの可能性を検証した。コーディネーターはサンフロント21懇話会シンクタンクTESSの青山茂研究員(シード副社長)
風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ1

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キラメッセが物語る東部の底力 コンベンションを地域の産業に
キラメッセの高い稼働率
12年間、東部のにぎわいの拠点として親しまれてきたキラメッセぬまづ
■12年間、東部のにぎわいの拠点として親しまれてきたキラメッセぬまづ
 青山 キラメッセぬまづは県東部初の展示コンベンション施設です。中西部のようなにぎわいの拠点を東部にもつくろうと、懇話会が提言して実現しました。約10年と利用期間を区切り、さまざまな試みをした結果、平均で73%という高い稼働率となりました。
 内村 成功の秘訣(ひけつ)をよく聞かれます。静岡、浜松両市などの施設に比べて利用料が安いこと、JR沼津駅前であること、トラックが乗り付けられ搬入が楽といったことが高い支持につながったと思います。
 また、東部が持つ潜在的な力も理由の1つです。例えば、繰り返し開催された陶器市。主催者によると、伊豆半島にあるホテル・旅館が同じデザイン、柄の器を100枚単位で買ってくれるそうです。まさに地域性がよく出たイベントといえるでしょう。
パネリスト 内村博隆 沼津市都市計画部長
●パネリスト
内村 博隆
沼津市都市計画部長
1978年沼津市役所入庁。97年から担当係長としてキラメッセぬまづの建設・運営に携わる。2009年より現職

 中山 中西部のような大きな展示場でなく、地域に見合った4000平方メートルの規模にしたのもよかったと思います。また、ハードだけでなくソフトにも力を入れました。キラメッセの基本コンセプトは「日本一親切で使いやすい施設」。それをかたくなに守ってきたことが継続して支持された要因だと思います。
 私たちは週1回、展示イベント施設活用研究会を開き、運営する側、利用する側双方がより良い施設を目指して議論しました。収益についても、駐車場台数や自販機の数まで徹底して検討しました。
 おかげで初年度の平成10年と技能五輪国際大会開催前の化粧直しがあった16〜17年以外は黒字です。トータルで1億8千万円のプラスとなりました。
 東條 73%の高稼働率というのは日本でもトップクラスですね。繰り返し使ってくださるお客様は施設にとって宝物。これからできるコンベンションセンターにとっても大きな財産でしょう。
 先ほどの陶器市のように、ここで展示会をやる意義はまだまだ掘り起こせると思います。視点を広げることで、この土地ならではの展示会が期待できると思います。
 青山 3年後には、市の展示場に加え、県の国際会議場と民間のホテルがそろった3点セットとなるわけですが、それだけ大きな施設を運営するには地域産業との連携が欠かせませんね。
 中山 今後の課題は3つあると思います。
 1つ目は、リピート率が高いため新規顧客の開拓をあまりしなかったので、営業のノウハウが陳腐化していないだろうか、という点です。
 2つ目は、経済波及効果が利用稼働率に相応する形では出ていません。たとえば広告代理店、土産物店、花屋、司会業など直接コンベンションにかかわる業種はもちろん、ホテル・旅館、飲食、運輸、旅行代理店、周辺観光施設、銀行など間接的な業種との連携が薄かったと思います。
 経済波及効果は直接効果の約2倍ともいわれますので、利用者協議会などを組織化すればもっと地域に貢献できたと思います。
 3つ目は、東部の独自性のあるイベントをあまり打てなかった点。ファルマバレープロジェクトに関連した展示がもっとあっていいですし、ものづくり産業も多いので、そうしたイベントの発掘も持ち越されていることが課題です。


地域の強み生かした営業活動を
パネリスト 中山 勝 キラメッセぬまづ運営推進協議会会長
●パネリスト
中山 勝
キラメッセぬまづ
運営推進協議会会長

スルガ銀行入行後、財団法人企業経営研究所出向。研究員、部長を経て2008年常務理事。サンフロント21懇話会TESS研究員

 青山 大きなコンベンションだと10〜13年、小さくても3年ほど営業期間が必要です。展示場と国際会議場の運営は一体で進めないとなりませんが、運営体制はいかがでしょう。
 内村 いま、県と市で会議場、展示場を一体で運営しようという方向性で検討しています。そこに民間の考え方を入れていきたいと思います。本年度中には組織も含めた方向性を出したいと思います。
 東條 複合施設というのは大きな強みですし、伊豆半島の入り口としていい選択だと思います。次の課題は持ってくるコンベンションを短期、中長期にどう考えるかでしょう。
 それには今までの顧客を含め、これから東部が狙っていく外客誘致のロードマップを作るためのビジョンが必要です。
 「日本一使いやすい施設」という考えを持続していければ、コンパクトにまとまった複合施設として日本でも有数の施設になると思います。あとは地域らしさをどこまで出せるか。地域が強みとする地場産業などとアフターコンベンションがうまく連携できれば、顧客の定着につながると思います。
 中山 ファルマバレー関連や地場産業のコンベンションのほかに、海外で盛んな企業インセンティブ(報奨旅行)などには、富士山が大きな強みになるでしょう。同様に、地元のわれわれが思いもしないものを外の方々は新鮮に感じてくれます。
 2月初旬に沼津市で全国のシンクタンクのメンバーによる会議が行われ、エクスカーションで沼津、三島市をまわりました。沼津御用邸記念公園では、ここでしか売っていないお土産をたくさん買っていましたし、沼津港でも市場で買い物を楽しまれました。三嶋大社では神職から鳥居のできた理由を聞いたり、普段は入ることのできない神域への案内をしてもらったりと、大変好評でした。
 東條 日本は国内会議が盛んです。国内会議の次にアジア会議、国際会議とステップアップしていくのが通例です。この地域は製薬関係が強いということですので、おそらく東京の製薬関係の年次大会が開かれると思います。日本で開く国際大会は割合手がけやすいので、その拾い出しをしたらいかがでしょう。


パネリスト 東條 秀彦 MPIジャパン理事
●パネリスト
東條 秀彦
MPIジャパン理事

旅行会社勤務を経て1991年千葉コンベンションビューローに勤務。誘致・支援・企画・広報・総務などを経験する。09年MPIジャパン理事

コーディネーター 青山 茂 シード副社長
●コーディネーター
青山 茂
シード副社長

オリエンタルランドを経て、現在シード副社長。日本航空民営化イベント、第10回全国スポーツレクリエーション祭「スポレクおきなわ」などをプロデュース
コンベンションをまちづくりに
 青山 今後、新たなキラメッセをまちづくりにどう生かそうとお考えですか。
 内村 たとえば沼津市は、商業やにぎわいづくりのための鉄道高架をはじめとする駅周辺の整備を進めています。三島市は新幹線駅がありますので、県東部の玄関口の役割、また大社などの歴史があり、教育機関も多い。長泉町は企業誘致に成功し、若い世代が住みたい街になっています。清水町も湧水があり、自然を生かした住宅地になっています。
 それぞれのまちの特徴を生かした東部地域のグランドデザインを描く中に、コンベンション産業をしっかり入れ込むことが必要と思います。
 青山 東部全域の産業政策としてのコンベンションを位置づけるとともに、グランドデザインのエンジン役をこのコンベンション3点セットが果たすべきだ、ということですね。
 内村 東部に住む方々が県東部は一つだという意識をもってもらいたい。みなが主役という意識をもって変わってもらいたいと思います。行政は住民の方々が活動しやすい舞台をつくることが役割です。
 中山 4月からこの地域の市町は新しい総合計画に基づいた行政運営をしていきます。内容は暮らしやすい環境をつくろう、自然を守ろう、産業面ではファルマバレーを生かそうといったことが盛り込まれています。各市町とも同じ方向性をもつ総合計画ですので、コンベンションセンターの役割も東部全体でつくっていけると思います。
 地方分権、地域主権、いろいろ言い方はありますが、この地域そのものがパワーを持ち、外に向かって情報発信をしていかなければいけない時代になっています。
 青山 コンベンション産業をスケールアップする上でのアドバイスをお願いします。
 東條 経験を積むというのが一番いいのですが、即経験は積めません。国際会議場ができた時に新たな業務が発生するわけです。
 営業しながら学んでいかざるを得ないのですが、5年先を見据えて人材教育をしていくことが、この施設とこの地域の資産になると思います。



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