サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 数多くのインフラが整っている富士地区において、人、物、ビジネスの面から今後どのようなことが考えられるのか。4月の「風は東から」は、2月に行われた富士地区分科会のパネル討論を取り上げる。パネリストに、富士市の小長井義正市長、日通総合研究所の大島弘明経済研究部担当部長、地元旅行会社レイラインの小松みゆき社長を迎え、2年前に開通した新東名高速道を生かした地域の振興策などを議論した。コーディネーターはサンフロント21懇話会シンクタンクTESSの大石人士研究員(静岡経済研究所理事)。

富士市分科会パネル討論
風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ1

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新東名沿線に新たな産業 物流・観光の支援策に期待
■物流拠点の集約化始まる

 大石 富士地区がこの恵まれたインフラをどのように活用していくのか伺います。
 小長井 この地域の活性化は、富士市の魅力をいかに発信し、民間の活力、民間資本を富士地域へ投下させるかにかかってくると思います。新東名の新富士インター周辺の物流拠点化を進めていますが、周辺はもちろん、田子の浦港も地域活性化に結びつける上で大きな鍵です。津波を防ぐ、にぎわいを創出していく、この二つをテーマに新年度、田子の浦港振興ビジョン推進協議会を官民協働で立ち上げます。
 小松 旅行会社レイラインは地元・富士で開業し、まもなく20年になります。
 事業の柱は二つ。一つはミャンマーとのご縁ができまして、現地に会社を設立しました。東南アジアに出られる会社のサポート事業を行っています。もう一つが着地型観光です。ハワイやグアムでよく見るオプショナルツアーのイメージです。残念ながら富士市では扱っておりませんが、静岡市や県の委託事業で、県中部の着地型のプラットフォームづくりをしております。着地型観光は、北海道から九州・沖縄まで、全国一斉に行われていて、“どこに行ってもそば打ち体験”といった状況です。それでもだんだん淘汰されつつあり、勝ち組・負け組が出始めた感じです。
 大石 首都圏周辺、また県内でも道路整備がかなり進んでいますね。
 大島 物流拠点は圏央道を中心に脚光を浴びています。圏央道がつながり、常磐道、東北道、中央道、東名などが環状道路に結ばれると、物流がよりスムーズになる、途中の事故などのリスクが減る、ダブルネットワーク・トリプルネットワークで複線化されるということで、定時性は上がってくるでしょう。 
 道路ネットワークがよくなることで、今までと同じ時間で届けられる範囲が広がっています。そのため、ナショナルブランドのメーカーさん、あるいはナショナルブランド全体で流通を持っている事業者さんの物流拠点の集約化が進んでいます。この地域は東に寄りすぎている面が無きにしもあらずですが、集約化の一つのポジションということも考えられると思います。

■パネリスト
小長井 義正 富士市長

総合商社ニチメン(現双日)を経て、1988年家業の小長井米店従事。97年12月から5期(15年半)、富士市議会議員。1月19日、富士市長に就任した。1955年富士市出身


■富士山の景観が観光資源

 大石 これだけの物流力を県が進める内陸のフロンティアを拓く取り組みの中でどう生かせばよいでしょうか。
 大島 物流面ではいかに安全性が確保できるかです。田子の浦の話でも出ましたが、防災という意味においても、要は安全・安心な物流拠点という展開においてポテンシャルは間違いなく高いと思います。全国拠点の中でどこを選ぶか、という時に、交通の結節点がトリプルアクセスくらいできるような場所の優位性は大いに発揮できるのではないでしょうか。
 大石 小松さん、いろいろな魅力や資源があると思いますが、なかなか有効に生かせていない気がします。
 小松 富士で降りる外国人はかなり増えています。国もインバウンドの振興に力を入れ、観光庁は14年度予算の8割をインバウンドに注ぎ込みます。外国人の方々が新富士駅を降りて、富士の大橋の上まで歩いている。そこから富士山を見て写真を撮って富士駅に行く。その写真が外国人が発信したブログに載っているようで、そのルート上から富士山がきれいに撮れるのです。
 また、地元にとって当たり前のものが一番の材料、大切な要素です。それは中にいる人だけでは探せないところでもあります。例えば、台湾などの海外メディアの仕事をよくお受けしますが、何百年も続いている古い料理店に興味を示していました。台湾にはこういった古いお店はあまりないそうですね。
 小長井 市内には富士山ビューポイントが100カ所指定されています。特に茶畑と富士山の景観が美しい大渕笹場は、その周辺を整備して車が止められるようにするなどして、多くの観光客や市民に富士山の素晴らしい景観を楽しんでもらうことを考えています。また、市役所の屋上を整備し「ふじさんてらすMierura」としました。また、富士駅、新富士駅間をワンコインタクシー、500円で結ぶ実験を夏山シーズンに行います。アンケート調査もしながら、今後の交通量、利用量のデータにも活用していけたらと思っています。
 田子の浦の観光活用についても、今年は海上から富士市や富士山を眺め、良さを再認識してもらおうと「田子の浦港海上まつり(仮称)」も題材にしようと考えています。

■パネリスト
大島 弘明
日通総合研究所 経済研究部
担当部長 主任研究員

1988年日通総合研究所(東京)入社。2003年経済研究部 担当部長 研究主査を経て、06年現職。トラック運送業界における事業環境の変化や労働・安全問題、物流効率対策などの調査研究に取り組む



■パネリスト
小松 みゆき
レイライン代表取締役社長

大手中小旅行3社の勤務経験を基に、1994年個人や団体のオリジナル旅行の提案を目指し独立開業。2001年現社名に変更。現在静岡県の委託事業として着地型旅行の推進に取り組む



■物流と観光の両立図る

 大石 富士は本来、人・物が集まりやすい場所ですが、撤退や縮小も多くあります。企業誘致や留置についてはいかがですか。
 小長井 企業誘致についても、これまで富士市が蓄積してきた技術や信頼を掘り起こし、磨き、いかに発信していくか。それが企業誘致や、市内のさまざまな企業の異業種間の連携などに広がっていくのではないでしょうか。そういった部分に、これまで以上に行政が積極的に取り組んでいく考えです。
 小松 残念ながら中国では、富士山は山梨県にあるというイメージが強い。富士市にこういうものがある、こういうことができるという発信をどうやっていくか。今、都内に市町村のアンテナショップがたくさん出ています。外国からだけでなく、首都圏や静岡県内からも、富士に人を呼べるような、面白いもの―例えば、由比の桜えび祭りに県内から人がたくさん来ています。そのように富士のシラスや素材をもっと発信していく仕方を考えなければなりません。
 大島 物流の仕組み、物流の現場で何が問題か、どこを改善すべきか事業者は分かっています。その部分を一緒に解決していくという立場で、物流に優しく、理解のある、関係の強い地域になれれば良いと思います。
 物流拠点が誘致できた場合、トラックの出入りが多くなります。観光などの面からすると、相反するものが出てこないとも限りません。簡単ではありませんが物流にも理解を示していただき、富士市だけでなく全国的に意識の向上を図ることが必要です。
 物流に関して東海地区は通過されるだけの地域になりかねません。JRの場合、片道100キロを超えると途中下車ができますね。それと同様に、例えば東京から大阪まで高速道路を使う場合、富士地区で途中下車しても「何時間以内なら追加料金がかからない」という仕組みをNEXCOに提案したらどうでしょう。トラックだけでなく人も一定の時間内なら途中下車を何回しても構わない。今のETCの技術を使えばいくらでもできるのではないでしょうか。
 小長井 物流面では、現在、新富士インター周辺の区画整理事業を進めています。具体的な引き合いもありますので一刻も早く整備を進めたい。一部では複合施設も進出できるような区画を造っていますので、物流のみならず、集客施設も進出する可能性があります。地域活性化につながっていくのではと思っています。
 また、行政が主導的に観光に取り組むため富士市の名前を全国・世界に発信していく役割を担う「富士山シティプロモーション推進室」を観光課の中に設置します。この地域には富士山観光交流ビューローという富士・富士宮地区一体の観光を担う組織もあるので、しっかり連携をとることは当然ですが、シティプロモーション推進室が先頭に立っていかなければならないと感じています。

■コーディネーター
大石 人士
サンフロント21懇話会TESS研究

静岡銀行入行後、1982年静岡経済研究所出向。2005年研究部長、12年理事。県社会資本整備重点計画策定・推進会議委員、三島市行政経営戦略会議委員など公職多数



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