今月、厚生労働省は2014年度の医療費が概算で39兆9556億円となり、12年連続で過去最高を更新したと発表した。医療費の約3分の1は高血圧性疾患や糖尿病などのいわゆる生活習慣病関連に使われている。ここにかかる医療費を公的保険外のサービスを活用し、予防や健康管理にシフトさせることで減らそうという動きが始まっている。
経済産業省は13年12月に「次世代ヘルスケア産業協議会」を発足。これは日本再興戦略の一環で、官民連携して「健康寿命延伸産業」の創出・育成を目指すものだ。
「健康寿命」は、「健康上の問題がなく、日常生活を送ることができる期間」を指す。健康寿命を延ばすことは、医療費の適正化はもちろん、国民の健康増進や、関連産業の活性化につながる。
同協議会は、公的保険外サービスの育成を需要と供給の両面から検討した。
【主な検討項目】
(1)既存の法律の適用があいまいな「グレーゾーン」の解消やヘルスケア産業向けの金融支援など、多様なサービスや商品を生み出す環境づくり
(2)東証の「健康銘柄」や日本政策投資銀行の「健康経営格付・優遇金利制度」など、健康増進を積極的に進める企業や健保組合へのインセンティブの付与
(3)消費者が「信頼」「安心」「安全」を判断できる品質の「見える化」(健康運動サービス分野を対象にしたアクティブレジャー認証制度)や認証を受けたサービスの広報・普及
今年5月には「アクションプラン2015」が発表され、予防や健康管理などのヘルスケア産業と、食・農、観光など地域資源を融合し、新たな農業のブランド化や観光などの新たな需要獲得を目指している。
具体的には、「健康に良い農産品のデータベース構築」と、「ヘルスツーリズム創出のための第三者認証の仕組みづくり」だ。ヘルスツーリズムとは、旅行で健康になったり、健康的な習慣を身に着けたりする旅行を指す。現在、国と観光業界が科学的根拠に基づく効果測定やサービスの品質を評価する仕組み(第三者認証制度)を検討している。 |