サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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官民一体で県東部の活性化策を探る「サンフロント21懇話会」は、光かがやく地域づくりに向けて研究・提言活動を行っている。その一環として毎月1回掲載している「風は東から」。12月は同懇話会全体会で行われた、アマチュアの日本フットボールリーグ(JFL)「アスルクラロ沼津」に所属する中山雅史選手のトークショーを紹介する。また、同チームを運営するアスルクラロスルガの山本浩義社長に、スポーツを活用した地域活性化について聞いた。

中山雅史氏トークショー
「中山雅史 飽くなき現役への執着
―なぜボールを追い続けるのか」

聞き手・澤木久雄SBSシニアプロデューサー

風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ7

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アスルクラロを地域の核に 東部一丸の支援体制構築
■入団は挑戦の始まり

澤木 中山雅史選手は44歳で一時引退し、この9月にアスルクラロ沼津(以下、アスル)への電撃入団を発表。同5日に初めてチーム練習に加わり、ピッチに立ちました。
中山 試合に向けた練習に参加させてもらったのでチームに迷惑をかけてはいけない。精一杯力を出さないと、ついていけない。ヘラヘラしたような姿を見せるわけにはいかない、真剣にやっている選手たちに失礼だ。決して生半可な気持ちでは来ていないというのを、プレーや声、姿勢で見せていかなければならない、という緊張感でいっぱいでした。
澤木 10月3日に行われたソニー仙台FC戦はベンチ入りこそしなかったものの、集まったお客さんが8300人。通常は3000人前後だそうです。グッズやユニフォームの販売も好調でした。
中山 ありがたいことです。僕だけを見に来ているとは思いませんが、自分が参加することの効果を実感して少し恐くなりました。今、自分はどこまでプレーができるのか。その不安と皆さんの期待とにギャップがあるので、それを埋める作業が非常に大変です。
澤木 10月11日は古巣ジュビロとの練習試合に出場しましたね。
中山 サッカー番組で自分のプレーを見て、全然できていないことに気付いて落ち込みました。もっと自分を鍛えないといけない。そうすればやっていくうちに体が反応できるようになる。ただ、それができるようになるには連続した練習が必要です。アスルで1回ハードな練習をすると、膝に水がたまったり、痛みが出たりする。それを東京に帰って良い状態にケアしてもらって、また沼津に来る。そこにどうしても間隔が空いてしまいます。沼津の練習に参加できなくても、東京でもう少し、心肺機能や筋力を高めていかないと、自分の目指す、チームへの貢献度にはほど遠いと思っています。
澤木 なぜ現役復帰したいという強い気持ちが湧き起こったのですか。
中山 札幌を退団する時に、会見で「引退」の文字は使いませんでした。リハビリを続け、良い状態まで戻せたら、またプレーヤーとして立ちたいという願望はずっとありました。膝も厳しい状態であることは把握していたので、まずは楽しくサッカーができればいい。しかし、一つ一つクリアしていくと欲が出てくる。このままチームに所属もせず、何の目標も持たずに、何を求めていくんだという部分で、それならばまず飛び込んでみようと。
声をかけてくれたのが山本昌邦さん。アスルクラロスルガ会長であり、山本社長のお兄さんです。報道では現役復帰と言われるが、そんなに大げさではなく、チームに属し、そこから挑戦の始まりというのが僕の中の意識です。

ゲスト:サッカー選手
中山雅史氏
藤枝市(旧岡部町)出身。藤枝東高、筑波大を経て、ヤマハ発動機(現ジュビロ磐田)に入団。J1歴代最多の157ゴールを記録し、W杯2大会に出場。2012年に一線を退いたが、今年9月、47歳で現役に復帰、アスルクラロ沼津に入団した。


聞き手
SBSシニアプロデューサー
澤木久雄氏



■地域の拠り所として

澤木 アスルは2006年頃に、サッカーだけでない総合スポーツクラブになりましたね。
中山 今は地域のコミュニケーションが不足しています。ですから、アスルが皆のコミュニティーの場になればいい。子どもを預けたり、トップの競技を目指したりするのは当たり前ですが、それ以外でも生涯スポーツとして活動していく、そうやって人が集まることでいろいろなコミュニケーションが生まれ、生活を豊かにしてくれます。
まちにスポーツクラブがあり、象徴的なものになってくれれば、それがみんなの拠り所。一方で、アスルが活躍することで「私たちのクラブが」という気持ちが芽生えます。「応援しているクラブがここまでなってくれた」となれば、それこそ感情移入できる、熱くなれる。それが家族の会話にも絶対入ってくる。「昨日のアスルすごかったね、中山が6点も取っちゃったもんね!」と。先々そんなふうになっていければ最高かなと思います。。
澤木 今後アスルが、総合クラブとして成長していくために必要なポイントはなんでしょう。
中山 成績が上がらないと注目もしてくれない。みんなも応援する気にならない。まず、チーム力を上げること。みんなが応援してくれるクラブになることが最重要課題ですね。
澤木 地域の力、企業協賛の力も大きい。自治体との連携も大事ですね。
中山 アスルに「沼津」と付いていますが、東部一帯が一丸となってここを盛り上げていくことが東部の活性化につながると思います。ですから、アスルにかける思いを強く持ってほしい。行政でもうまく、集まる場や盛り上げていく場をつくってほしいし、スタジアムもつくってほしいですね。
ピッチに立てるかどうかは自分次第。どう鍛え、どう自分を持っていくかが勝負。アスルに刺激を与え、アスルから刺激をもらって、東部のみなさんに元気になってほしいと思います。



地域密着のクラブ運営を目指す

山本浩義
アスルクラロスルガ社長

アスルクラロ沼津はJFLに所属する社会人サッカーチーム。今年に続き来年も、元日本代表の中山雅史選手を迎え、J3昇格を目指している。中山選手の入団で10月にはホームの愛鷹グラウンドに8000人余が詰めかけた。地域にチーム名も浸透した。
こうした興業はファンあってのもの。昇格を目指し、地域のみなさんのご支援を増やしていきたい。成績ではなかなかJ1、J2のチームには勝てないが、地域密着度では負けたくないと思っている。現在、ファンクラブ(ソシオ)会員3万人に向け、活動中だ。また、オフシーズンにスポンサー企業向けの感謝祭や地域のイベントに選手が関わるなど、ファンを増やす取り組みを着実に進めたい。
ホームゲーム開催時には多くの人が集まり、そこに販売などの経済効果が生まれる。アウェーチームとの交流も芽生える。例えば、他地域のチームと対戦するときに、お互いの地域の物産展を開くといったこともいいだろう。こうしたスポーツを通じた産業振興を戦略的に進めようと、県東部では「県東部地域スポーツ産業振興協議会」が官民挙げて立ち上がった。同協議会はクラブ部会を作り、アスルクラロ沼津の活動を支援していただけるということで心強い。
チームの運営と同時に、ユース世代の選手育成にも力を入れている。メーンとなるのは幼児〜中学生を対象としたサッカースクールだ。昔こそ東部地域は県内でサッカー後進地域と言われていたが、今の小中学生の実力は他の地域に引けを取らない。ただ、高校になると地元を離れ、中西部の強豪校のサッカー部に入ることが多い。将来的にはプロリーグで活躍できる選手を東部で育成したい。そのためにもユースチームの設立は必要不可欠だ。

総合型スポーツクラブ「アスルクラロスポーツクラブ」の運営も手掛けている。サッカーのみならず、新体操、テニス、グラウンドゴルフなどを通じて地域の方の健康づくり、コミュニティーづくりをサポートしている。今後はヨーロッパ型の多世代、多種目、多趣向のニーズに応えたスポーツクラブを目指し、競技スポーツや余暇スポーツを楽しむ環境をつくりたい。それが本来のスポーツクラブの在り方であると考えている。


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