― 橋本先生と同プロジェクトのかかわりをお話しください。
橋本 経済産業省商務情報政策局サービス産業課長のころ、大学や研究機関を核に地域にコンソーシアムをつくり、新しいサービス産業を育てる政策を進めていました。シリコンバレーやボストン、ノースカロライナなど米国発祥のバイオやIT産業クラスターがうまくいっていて、日本でも2000年代になって地域クラスターの重要性が認識されていた頃です。
ファルマバレーについては、医療を産業として見なす事がはばかられる時代から、医療をテーマにした産業振興に大きく舵を切ったプロジェクトとして注目していました。東部には、医療産業クラスターの核になれる大学がありません。代わりに、静岡がんセンターや同研究所がクラスターの中核となるのは発想として正しい。ただ、やはり大学ではないので東工大や東京農工大などと連携する意味があると思います。また、「かかりつけ湯」のような観光と健康を結び付ける考え方も非常に先進的でした。
私も産学連携や観光、健康などのサービス産業を担当していたこと、県内出身者であることから、県からファルマバレーの評価委員にお声掛けいただきました。
― ファルマバレーは国内外から高い評価を受けていますね。
橋本 ここ数年は、製品にとどまらず特許も含めて成果が出ています。企業のネットワークも広がってきました。
また、9月に新産業を創成するインキュベーション(孵卵器)機能を持った「県医療健康産業研究開発センター」が開設されますが、この存在は大きいと思います。
私は、大学が“器”となって、さまざまな「知」「人材育成」「インキュベーション」が「融合・反応・濃縮」して新産業が生まれる「メルティングポット理論」を提唱しています。ファルマバレーは病院が核ですから大学に比べてプレーヤーは限定的ですが、代わりに県やファルマバレーセンター(PVC)の職員がいて、周りにいろいろな企業も進出してきています。
そこへ今回、研究開発センターというインキュベーションができ、地域の産業(企業)がこの中に入り込んできました。通常の形とは違いますが、「るつぼ」、あるいは「プラットフォーム」が形成されるという意味でイノベーション(技術革新)を生み出す可能性が一段も二段も上がったと言っていいでしょう。
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■県医療健康産業研究開発センター外観 |
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