サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から興奮冷めやらないラグビーワールドカップ。日本中を熱狂させ、世界各国から多くの人が訪れた。サンフロント21懇話会は先月、世界が注目する一大スポーツイベントの本県開催を、地域経済のさらなる国際化と県東部の活性化につなげることを目的に、大会出場国の大使館関係者や経済団体幹部、経済人とのビジネス交流会を東部地区分科会に代えて開催した。11月の「風は東から」はその模様を紹介する。また、共同開催した県の土屋優行特別補佐官と、懇話会の岩崎清悟副代表幹事(静岡ガス取締役特別顧問)に同交流会がもたらす価値や可能性について聞いた。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ8

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スポーツイベント機に国際ビジネス交流会を
■ラグビーテーマに経済界が集結

■川勝平太知事はあいさつでスポーツ、文化、芸術の持つ魅力を語った

会場は長泉町のクレマチスの丘にある「ヴァンジ彫刻庭園美術館」。ロシアとイタリアの両大使館関係者や県東部、神奈川県の経済人ら約160人がラグビーワールドカップの日本大会開催を機に、和やかな雰囲気の中、交流を深めた。
ラグビーのファン層はビジネスエリートや富裕層の比率が高いと言われている。過去の例では、大会がグローバルなビジネス交流の場として機能してきた。同交流会は、2020年に向けたトライアルとして、ラグビーワールドカップに合わせ開催。ラグビーを愛する企業人らが集う「神奈川ノーサイドプレミアクラブ」と連携し、神奈川県内から約30社が参加した。
冒頭で、川勝平太県知事は「今日は県境を越えてラグビーを愛する経済人が集い、スポーツや観光で心を豊かにしている。こうした交流が平和をもたらすと考えている」と述べた。続いて、ロシア大使館関係者は流ちょうな日本語であいさつ、続くイタリア大使館関係者は静岡で行われるイタリアンフェアのPRを行うなど国際色豊かな幕開けとなった。
ラグビーにちなんだトークショー、静岡交響楽団による弦楽四重奏などを交え、会は進行。美術館という特別な場所で、参加者は新鮮な出会いを楽しんだ。

■参加者のすぐ横に美術品が並ぶ会場で行われた交流会

■会場での国際交流

■静岡交響楽団による演奏 ■ラグビーをテーマにしたトークショーは大いに盛り上がった


■文化、スポーツの力生かせ 岩崎清悟サンフロント21懇話会副代表幹事
台風の影響もあり、神奈川県側の参加人数は多くはなかったものの、スポーツを切り口にして経済界の面々が語り合うのは素晴らしいこと。面白い取り組みだった。
ある意味、ラグビーというスポーツの持つ魅力だろう。私も南アフリカ対イタリア戦をエコパスタジアムで観戦したが、他の競技と大きく違い、応援席は各チームの応援団が入り乱れて座っている。試合中は皆が熱いプレーに集中し、相手チームのファインプレーを賞賛する。試合が終わればノーサイド。負けたイタリアチームの選手もサバサバした表情で、純粋にプレーを楽しんでいることが伝わってきた。勝ち負けでなく、本当の意味でスポーツが持つすばらしさをラグビーは示してくれた。
本大会は、日本に新しいスポーツ文化、あるいはスポーツを観戦する文化を持ち込んでくれたと思う。
それらを踏まえ、懇話会が主催した交流会は、さまざまな趣向がちりばめられていた。吉野俊郎氏、木暮明氏など往年のレジェンド選手によるトークイベントでは、試合の行方をプロの視点から予測したり、それぞれのポジションの役割を実演付きで解説したりした。これは出席したわれわれもおおいに楽しめた。
文化やスポーツが持つ「力」をもっと日本の社会の中で生かすべきだ。会場となったヴァンジ美術館の雰囲気も、普段のレセプション会場とは異なり、参加者に違った気持ちを湧き立たせたのではないか。
欧米は積極的に美術館を開放している。私も米ハーバード大の図書館で行われたレセプションに出たことがあるが、やはりビジネスの話だけではなく、文化や芸術への考えを話すうちに、相手の人となりが伝わってくる。そうなって初めてビジネスの話に移り、また新たな展開につながる体験をしてきた。
グローバルな場では、相手の文化、歴史、スポーツなどのバックグラウンドを理解することも重要だ。特に欧米は、いきなり経済の話から始まるつながりはすぐに終わってしまう。たとえばワイン、音楽、スポーツ、ゴルフなどは好例だろう。相手と共通の話をしながら、こいつ面白いやつだな、と思ってビジネスの話をする。事業をグローバルに展開していくとなると、こうした話も必要だ。
だが、いきなりその世界に入るのは抵抗がある。今回の懇話会の試みは、そういう雰囲気や場所を提供して、そこに多少なりとも海外から人が来て、さまざまなセッションが行われた。 交流会は、具体的なビジネスの話にはつながりにくかったと思われるが、今後に十分役立つとても良い試みだったと思う。


■県境を中心とした交流を 土屋優行静岡県特別補佐官
近い、近いといいながら、実は神奈川県側と本県の両経済界が交流する機会はそう多くない。
県の政策としては、静岡銀行、横浜銀行、山梨中央銀行の3行と各県、各地の商工会議所9団体で構成している「県境地方創生連絡会」が2016年に立ち上がった。県境を越えた地図をつくったり、多言語観光サイトの立ち上げを検討したりしている。今回の交流会のように民間主体で広がりが出てきたことは歓迎したい。
美術館の中に舞台をしつらえ、飲食や会話が楽しめるこうした形のレセプションは非常に印象的だった。参加者も皆驚いたのではないだろうか。おそらく、参加者の記憶に今日の出来事は印象深く残るだろう。そして、次にどこかで出会ったときに「あの時のあの場所で交流会をしましたね」というような共通の話題が生まれることだろう。
実は交流会の翌日、川勝平太知事がアイルランド大使をお連れしてクレマチスの丘のレストランで昼食をとった。帰り際、美術館を通り、広場を通っていかれたのは前日の交流会が深く印象に残っていたからこそだろう。
経済界には美術に関心がある方が多いが、実は足を運ぶ機会は多くない。今回、美術館に行き、美術品を目の当たりにしながら交流会を開催したことで、特徴のあるエクスカーションなりコンベンションなりの可能性が見えたと思う。日本に限らず、海外の方にはもっと喜ばれると思う。
来年も世界の国々から日本を目掛け、数多くの人が集う。こうしたビッグイベントをうまく地域活性化、経済振興につなげるための方策を知恵を絞って考えていかないとならない。また、神奈川県との経済交流は今後も続けたい。今回を第一歩に、来年以降どうつなげるか、どうこの交流会を仕立てるか考えていきたい。
それには、懇話会だけでなく、例えば商工会議所などにも声を掛け、実現したらどうか。その際、商議所なら連携する商議所を、金融機関は金融機関を、BtoBの相手先を、といった具合にカウンターパートに必ず声を掛けるのが肝要だ。
県東部はものづくり産業だけでなく、豊かな自然と美しい景観があり、神奈川県、山梨県も近い。県の真ん中を中心とするのでなく、接点を中心とした展開が考えられる。経済や文化に県境は関係なく、県境をまたいでつながることでもっと大きな価値が生まれるのではないだろうか。




■企画・制作/静岡新聞社地域ビジネス推進局

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