大坪 人生100年時代に向けたファルマバレーの新たな取り組み「健康長寿・自立支援プロジェクト」が始まっています。ゲノム解析等による老化現象の予測・予防や、補助器具の開発、可能な限り自立した生活をして、介助者の負担を最小にできる理想の居住空間の提案など四つの戦略から構成されていますね。
川勝 高齢になったときにいかに安心して暮らせるのかは大きな問題です。ファルマバレーを20年近く続ける中で100以上の製品が生まれ、医療健康関連産業に参入した企業は約50を数えます。老いや病気をネガティブにばかり捉えるのでなく、安心して老い、安心して医療のお世話になれる、そんな地域づくりが進んでいます。
岩崎 超高齢社会に対応する大切な視点は「多様性」でしょう。高齢者と言っても健康状態や就労意欲は千差万別。戦後の日本を支えた世代と違い、これからの高齢者は多様な人生観を持った人たちです。その多様性にどう対応するかが一つのポイントですね。
もちろん、全ての人が満足できるものは難しいと思います。多様性をもった人たちに適合していく取り組みには、行政がやるものと民間がやるものがあり、民間がやるものはしっかりと付加価値を付ける。その付加価値に応えるマーケットはあります。また、最後は誰もが動けなくなります。体が動かなくなった方は行政がしっかり面倒を見る仕組みをつくらないと難しいでしょう。官・民それぞれの活力を融合して初めて、超高齢社会への備えができてくると思っています。
大坪 そんな中、昨年12月に隣の山梨県と、医療健康産業分野の連携協定を結びました。これは画期的なことですね。
川勝 山梨県と本県は共に「ふじのくに」として、富士山の世界遺産登録を実現しました。あと1年もすれば甲府と静岡が中部横断自動車道で結ばれます。さまざまな連携が進む中、ファルマバレーと、山梨県内の電子機器の生産拠点等をつなぐ「メディカル・デバイス・コリドー」構想が立ち上がりました。それにより、富士の麓に医療健康産業の一大拠点が誕生します。 |