さまざまな関連サービスも次々と生まれている。ペット保険は一般的になったが、ほかにも葬祭サービスやフォトスタジオ、犬と一緒に入居できる特別養護老人ホーム、さらには老犬が入居する老犬ホームまで登場している。これは、犬を飼いたくても最期まで面倒を見られないという、高齢の飼い主をサポートするサービスだ。
全国でも珍しい取り組みを始めるのが三島市。健やかで幸せなまちづくりを標ぼうする「スマートウェルネスみしま」の一環で、ペット保険最大手のアニコム損保と、愛犬の健康管理を通じて飼い主の健康意識を醸成しようと、体重、体脂肪測定会や健康相談会のイベントなどを検討している。これにより、愛犬の散歩を家族で楽しめる健康的な体づくりをサポートする。
一方で、警察犬、麻薬犬、聴導犬、盲導犬、介助犬、災害救助犬など、人の役に立つ「使役犬」は大いに増えたが、リタイアした犬が安心して余生を過ごせる仕組みはなく、ボランティアに頼っているのが現状だ。
伊藤院長は「特に犬は人の社会に相当入り込んで活躍しているが、彼らは“市民権”を与えられていない。人のために働いた犬がリタイアしたら、一生公費で面倒を見てあげるべき」と言う。
また、各自治体が「殺処分ゼロ」を目指しているが、引き取り手が見つからない動物はどこで誰が面倒を見るのか、といった問題が残る。動物愛護先進国の米国やドイツは、引き取り手のない愛玩動物の受け皿として立派な施設を作っている。
ウィズコロナの新しい生活様式が愛玩動物と飼い主にも求められている。家族が感染した場合、どこに預けたら安心なのか。「災害時と同様、地域に受け皿をしっかり作っておかないと、不幸な動物が増えてしまう」とNPO法人「人と動物のハッピーライフ」の西島明信事務局長は懸念する。サンフロント21懇話会活動から生まれた同NPOも設立から4年目を迎え、動物愛護の啓発セミナーや、シンポジウム、飼い主と愛犬の絆を深めるイベントの開催などを精力的に行っている。本年度内に伴侶動物の一時預かり拠点施設の候補地を決める予定だ。
県は、浜松市にある県立動物管理指導センターの在り方検討会を本年度立ち上げる。従来の殺処分施設から命をつなぐ施設への転換を図る方針だ。
人と動物が幸せに暮らせる地域をつくるには、行政の役割が大きい。また、ボランティアやNPO、獣医師会など関係する団体が一丸となり、愛玩動物の待遇向上について声を上げていく必要がある。 |