サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から「2021.6.24 静岡新聞掲載」

コロナ禍で働き方が大きく変化した。首都圏ではリモートワークが当たり前になり、働きながら休暇を取る「ワーケーション」が誕生した。一方、観光が大きく打撃を受けた地方は、新たな交流人口拡大の手法として、ワーケーションに熱い視線を送る。6月の「風は東から」は、事業型NPOサプライズの飯倉清太代表理事と、大手町・丸の内・有楽町エリアでラボ運営(3×3Lab Future)や地域活性化を推進する三菱地所エリアマネジメント企画部の神田主税(ちから)マネージャーに、県東部伊豆でのワーケーションの在り方を聞いた。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ3

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ワーケーションで地域振興 鍵握るマーケティング戦略
■社会の変化とワーケーション
■神田主税 氏
三菱地所エリアマネジメント企画部マネージャー/加和太建設 三島デジタルシティ推進アドバイザー
新幹線で東京に通勤し、ニューノーマルな働き方を探求中。社会課題解決を目指す三菱地所のまちづくり協議会であるエコッツェリア協会に所属し、大手町の活動拠点「3×3Lab Future」にて、丸の内ワーカーとともに地域課題を中心に様々なテーマに取り組んでいる
神田 ワーケーションは、リゾート地など普段とは違う場所で、リフレッシュしながら新しいことを考えたり、集中的に仕事をしたりすることを指します。ホテルの会議室を利用し、オフィスとあまり変わらない密閉空間で行う従来の企業研修とは大きく異なります。開放的な空間に身を置き、活発なディスカッションをすることでイノベーションも生まれやすくなります。
私が所属する三菱地所はワーケーション施設を南紀白浜、軽井沢、熱海にオープンしました。7月には伊豆下田も開設予定です。施設によって海があったり、森の中だったり、日常を忘れさせる素晴らしいロケーションです。
飯倉 昨年はリモート元年ともいえる年でした。地方ではまだまだテレワークやリモートワークって何?という感覚もありますが、すでにリモート会議は当たり前になりましたね。
大手通信会社のように1カ月に1度の出社で良いという企業も出てきました。働く場所の自由度が増えることで会社の概念も変わっていきます。広いオフィスも要らなくなっていきますね。リモート授業を体験している大学生が社会人になると、状況は一気に加速すると思います。
神田 ワーケーションはいわゆる「ノマドワーカー」がターゲットになるのでしょうが、実際はまだまだ少数です。ですから我々は企業が取り入れやすい社員研修をターゲットにしています。そうなると1泊か2泊。東京から100キロ圏内で、比較的アクセスしやすい伊豆は丁度良い場所だと思います。
飯倉 ワーケーションができる人は首都圏で働く人の2割程度と言われています。その人たちにどうやって東部伊豆を選んでもらうのか。
私は、ワーケーションには「左脳型」「右脳型」「オープンイノベーション」の3つのタイプがあると思っています。左脳型はエクセル・ワードなど書類系の方、主に作業に集中したい人達。右脳型は自然の中を散歩しながら、アイデアを高めたいタイプ。そして、人との会話を通して新しいことを生み出すタイプ、これがオープンイノベーション型です。


■差別化とネットワーク化
■飯倉清太 氏
事業型NPOサプライズ代表理事・静岡大地域創造学環客員教授
2008年にNPOを設立し代表に就任。ビジネスで培った経験から多くの地域活性プランニングを担当。2016、2017しずおかグッドデザイン受賞。「修善寺ドットツリー」や「ぬましんコンパス」等にて企業と連携しプロジェクトデザインを担当
神田 知り合いのノマドワーカーからは伊豆でお勧めの場所がないか、といった相談を数多く受けます。彼らは伊豆を大雑把にとらえている場合が多く、なんとなく知名度のある熱海や下田に流れている印象です。
飯倉 修善寺や天城などでは昔から、川端康成や夏目漱石など、様々な文人墨客が逗留(とうりゅう)し、創作活動をしていたワーケーションの素地があります。都会の喧騒から逃れ、自然に身を置き、温泉で癒やされる。面倒を見てくれる旅館の方々の存在もあったでしょう。また、海だけでなく山や川があり、自由に自然が選べます。電車で来られるのも魅力ですね。
神田 伊豆にワーケーションができる場所の選択肢がもっと増えるといいですね。また、西伊豆ならヒーリング、熱海は起業といったように機能、用途が差別化されていると尚良いと思います。
そういう意味でワーケーションは観光に近いと思いますので、地域の観光地域づくり法人(DMO)が中心になって仕掛けるのも良いのではないでしょうか。
飯倉 三島や熱海から東京に通っている人も多く、首都圏の企業がワーケーションに何を求めているのか聞くことができます。また、今後副業が広がるにつれ、ワーケーションを利用する人も増えてくるでしょうね。伊東では研究会も立ち上がっています。
神田 首都圏では地域で副業を始める、という活動が盛んになっていて、専用のマッチングサイトも登場しています。東京一極集中の是正もあり、内閣府が推進していますので、この流れは拡大するでしょう。伊豆は首都圏からの移住者も多いですから、伊豆で何かをやりたいと考える人にとってロールモデルになる人がいたり、創業支援をしてくれたりする人材が容易に見つかりそうですね。


■様々なサービスの実証事業を

飯倉 今、全国の自治体がワーケーションを取り入れようとモニターツアーを行ったり、コワーキングスペースを整備したりしていますが、明確なゴールを設定しているところは少ないと感じています。
ワーケーション自体の経済効果だけでなく、ワーケーションをきっかけに、どうやって地域と企業なり人なりのつながりをつくるかが重要です。言い換えるとワーケーションで訪れた人にどんな価値が提供できるのかが明確でないと、単なる言葉遊びになってしまうと思います。
神田 大分県と富士通は移住・ワーケーション協定を締結しました。同県のもつ地域資源や人材と、同社のノウハウやスキルを活用し、様々な地域課題の解決を図ったり、社員の新たな働き方を探ったりする取り組みです。
このように、地域と企業が結びつくというのは良いことですし、南紀白浜のように企業のサテライトオフィスが出てくる可能性もあります。将来的に外資系企業が来てくれると面白いですね。
飯倉 旅館やホテルなどは稼働率が7割であれば、残りの数割をサブスクリプションで貸し出したり、平日限定で貸し出したりする方法もあると思います。首都圏の特定の「数社」と契約し、リピート率を高めファンになってもらえるようなサービスを提供したらどうでしょう。その際、おもてなしの中身も検証が必要ですね。声を掛けないでほしいとか、食事の時間を自由にしたいとか、様々な要望が出てくると思います。
神田 ワーケーションのマーケットは大きくはありませんが広がる素地はあると思います。首都圏の大手企業は地方に興味を持っています。サテライトオフィスだけでなく、淡路島に本社を移転した人材派遣大手のパソナグループの例もあります。
また、人のネットワークはロケーション同様に大切です。パソナグループのように地域とゆかりがある人物がいると強い。私の出身地である浜松市は都内で行われる同市出身者の会合に市長が出向き、地元とのつながりを作る活動をしています。
飯倉 今は施設やWi-Fi環境などハードの整備が先行していますが、次はソフトの段階です。どのようなソフトが必要なのか、先ほどの3つのタイプを参考に考えてみるのも良いでしょう。
例えば、アマゾンのように飼い犬と同伴出勤できる働き方に憧れませんか?であれば、犬連れで伊豆に来て、ドッグランで遊ばせている間に仕事をして、宿泊して帰っていく「ワンケーション」などはどうでしょう。あるいは東部伊豆各地のワーケーション施設を定額で借りられるサービスなども良いですね。招待枠があり、仲間を気軽に誘ってブレーンストーミングをしたら良いアイデアがどんどん出そうです。富士宮市にあるホールアース自然学校の里山テントサウナなどは、その好例です。


飯倉さん、神田さんお勧め!県内ワーケーション施設3選
(1)WORK×ation Site 熱海(熱海市)
相模湾を一望できるリゾート施設「アカオリゾート公国」内に三菱地所が整備した施設。アカオリゾート内の様々なアクティビティーとのパッケージングが可能。業務と併せて、効率的にチームビルティングができる。
(2)ホールアース自然学校(富士宮市)
富士山の溶岩×湧水の川。日本一のロケーションでのテントサウナ体験。仲間とワイガヤするうちにアイデアが次々湧き出しそう。イノベーションを起こしたいときに。
(3)時之栖 山羊の丘コテージ(御殿場市)
富士山の雄大な景観と地ビールや温泉なども楽しめる。カヤックやE-BIKEなどアクティビティーも充実。家族と休暇を満喫しながら仕事も、というファミリーや、企業の開発合宿やチームビルディングにも最適。


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