飯倉 今、全国の自治体がワーケーションを取り入れようとモニターツアーを行ったり、コワーキングスペースを整備したりしていますが、明確なゴールを設定しているところは少ないと感じています。
ワーケーション自体の経済効果だけでなく、ワーケーションをきっかけに、どうやって地域と企業なり人なりのつながりをつくるかが重要です。言い換えるとワーケーションで訪れた人にどんな価値が提供できるのかが明確でないと、単なる言葉遊びになってしまうと思います。
神田 大分県と富士通は移住・ワーケーション協定を締結しました。同県のもつ地域資源や人材と、同社のノウハウやスキルを活用し、様々な地域課題の解決を図ったり、社員の新たな働き方を探ったりする取り組みです。
このように、地域と企業が結びつくというのは良いことですし、南紀白浜のように企業のサテライトオフィスが出てくる可能性もあります。将来的に外資系企業が来てくれると面白いですね。
飯倉 旅館やホテルなどは稼働率が7割であれば、残りの数割をサブスクリプションで貸し出したり、平日限定で貸し出したりする方法もあると思います。首都圏の特定の「数社」と契約し、リピート率を高めファンになってもらえるようなサービスを提供したらどうでしょう。その際、おもてなしの中身も検証が必要ですね。声を掛けないでほしいとか、食事の時間を自由にしたいとか、様々な要望が出てくると思います。
神田 ワーケーションのマーケットは大きくはありませんが広がる素地はあると思います。首都圏の大手企業は地方に興味を持っています。サテライトオフィスだけでなく、淡路島に本社を移転した人材派遣大手のパソナグループの例もあります。
また、人のネットワークはロケーション同様に大切です。パソナグループのように地域とゆかりがある人物がいると強い。私の出身地である浜松市は都内で行われる同市出身者の会合に市長が出向き、地元とのつながりを作る活動をしています。
飯倉 今は施設やWi-Fi環境などハードの整備が先行していますが、次はソフトの段階です。どのようなソフトが必要なのか、先ほどの3つのタイプを参考に考えてみるのも良いでしょう。
例えば、アマゾンのように飼い犬と同伴出勤できる働き方に憧れませんか?であれば、犬連れで伊豆に来て、ドッグランで遊ばせている間に仕事をして、宿泊して帰っていく「ワンケーション」などはどうでしょう。あるいは東部伊豆各地のワーケーション施設を定額で借りられるサービスなども良いですね。招待枠があり、仲間を気軽に誘ってブレーンストーミングをしたら良いアイデアがどんどん出そうです。富士宮市にあるホールアース自然学校の里山テントサウナなどは、その好例です。 |