サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から「2021.7.22 静岡新聞掲載」

サイクルスポーツによる地域づくりが盛んに行われている。健康増進や教育、観光振興と、期待される分野は広い。今年4月には地域密着型チームが参加する「ジャパンサイクルリーグ(JCL)」が発足し、全国9チームが加盟している。7月の「風は東から」はプロサイクルチームが地域に与える意義を考える。自転車競技が盛り上がる中、他地域の事例も参考に、一過性のムーブメントに終わらせず、地域づくりにつなげる方法を聞いた。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ4

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地域密着型プロリーグ誕生 自転車で地域課題の解決を
■二人三脚で自転車の まちづくり ―レバンテフジ静岡
■二戸監督は「地域に根差し、支えられるチームにしたい」と意気込む
2020年8月に、富士市と地域密着型プロサイクリングチーム「レバンテフジ静岡」は、自転車を活用した地域づくりに関する連携協定を結んだ。レバンテフジ静岡は、JCLに参戦している。同年2月から拠点事務所を市内に構え、市と二人三脚でサイクルスポーツを通じた自転車活用推進やサイクルツーリズム振興を図っている。
同市には、今までプロのスポーツチームが存在しなかった。近隣市町では、サッカーに代表されるプロチームが市民と共に地域を盛り上げている。将来的な誘致を考えていたところ、同チームの話が浮上した。市スポーツ振興課の石井俊勝主幹は「当市はサッカースタジアムのような施設がなく、体育館も市民向けだ。特別な施設がなくてもプロチームとして活動できる自転車競技は誘致するには格好のカテゴリだった」と語る。
二戸康寛監督は「静岡県は、昔から自転車レースが行われ、競技者の間では身近な地域。富士市を拠点に、登りの強化なら伊豆、集団で走りやすい富士宮から山梨県身延周辺、平坦の練習には安倍川の河川敷など、練習環境に変化が付けられるのも魅力」と同市を選んだ理由を語る。
■連携協定を締結した小長井義正富士市長(右)と二戸康寛レバンテフジ静岡監督(中央)
■中学生が熱心に聞き入った職業講話
誘致から1年半。市が主催する交通安全運動の啓発など、地域貢献活動に選手が積極的に参加している。中学生向け職業講話には佐野淳哉選手と二戸監督が出向き、プロのサイクリストの仕事ぶりについて話をした。また、地元イチゴ農家の収穫を所属選手が手伝い、その模様が複数のメディアに取り上げられるなど、特産品の話題作りにも一役買っている。
本年度同市が策定する「自転車活用推進計画」にも助言を行う。例えば、「自転車競技の裾野拡大」という課題は自転車やパネル展示などの施策に留まりがちだが、選手と一緒の体験会を盛り込むなど、一歩踏み込んだ計画づくりが進んでいる。
さらに、関係者が望んでいるのがプロロードレースの地元開催だ。2日間で延べ5000人が集まる大会で、地域へのインパクトも大きい。二戸監督は「間近でプロの迫力、スピード感を感じてもらえる機会を作りたい。それをきっかけにサイクルスポーツを身近なものにし、チームの認知も広げたい」と開催実現に意気込む。市も開催に前向きだ。「自転車のまち」として発展する思いを具現化する「自転車活用推進計画」を進め、市内でのプロロードレースを開催すること。両者の進む方向性を合わせ「自転車文化」を共に創る取り組みが始まっている。


■観光振興で九州と世界の架け橋に ―スパークルおおいたレーシングチーム
■「魅力的なサイクルルートも積極的に紹介したい」と語る竹林氏
「スパークルおおいたレーシングチーム」は今年1月に発足した。レースのかたわら、自転車と「環境」「健康」「観光」を掛け合わせた地域プロデュースを推進している。
力を入れる分野の一つが、サイクルツーリズムの振興だ。大分県は以前から「大分サイクルフェスティバル」や「ツールドくにさき」などの大会があるサイクル王国。同チームの竹林謙ビジネスプロデューサーは「九州の大自然や恵まれたアウトドアフィールドを活用し、新たなサイクルライフを提案したい」と語る。
コロナで減ってはいるものの湯布院や別府などは海外から多くの観光客が訪れる。高額な宿も増え、別府を起点に自転車で遠出をしたいというニーズも増えている。特別拝観付きプランや、高級農泊プラン、グランピングプランなど、ハイエンド向けのガイドツアーも企画中だ。
■ガイドツアー終了後の参加者との集合写真
文化、歴史、風土の多様性と遊びのコンテンツの多さを誇る九州だが、今までは県域を越えて一つになる機会が少なかった。「自転車はあらゆる面から九州を一つにする可能性を感じている」と竹林氏。九州全体を楽しむ1週間ライドや、アップダウンを使ったヒルクライムもできる。また、こうした活動はオフシーズンの選手の収入にも繋がる。「レースは仕事、地域貢献は選手のライフワーク」―今後も九州を舞台に熱狂と感動を伝える活躍が期待されている。


■地域にとって身近な存在に ―宇都宮ブリッツェン
■「心にも良い影響がある自転車の楽しさを広めたい」と語る廣瀬氏
「宇都宮ブリッツェン」は日本初の地域密着型プロサイクルチームだ。
同チームを運営するサイクルスポーツマネージメントの廣瀬佳正副社長は、「最初に着手したのが、地元の子どもたちの安全を守ること」と振り返る。プロスポーツで培った危険回避の方法などを自転車安全教室で教えている。プロから教わることで、子どもたちの理解度も上がるという。このほか、ジュニアスクールの運営、サイクルスポーツイベントの実施など活動は多岐にわたる。
活動もユニークだ。独自の「補助輪卒業」カリキュラムや、初めて自転車に乗る体験をオリジナルの紙芝居にしたり、地元農家の田んぼで選手が子どもたちと一緒に作った米を「ブリッツェン米」として販売したりしている。
ホームページには大手から地元企業までスポンサーがずらり。宣伝だけでなくスポンサー企業のCSRを担う活動を念頭に置いている成果だ。「スポンサー企業のみならず、地域の皆さんにとっていかに身近な存在になるかを常に考える」と廣瀬氏。各種啓発ポスターやビール会社の地域限定パッケージ、献血の呼びかけなどに選手が登場している。また、こうしたノウハウは他の地域密着型チームにも惜しみなく情報提供し、第二第三のブリッツェンを生み出そうとしている。「おそらく、10年後には全国に今の倍以上の地域密着型プロチームが誕生しているはずだ」と廣瀬氏は将来を見据えた。
■プロならではの知見を活かした安全教室

ハード、ソフト両面でレガシー構築を 広岡健一静岡県スポーツ担当部長
2015年12月に伊豆ベロドロームがオリンピック自転車競技の会場になることが決定した。それを機に県内では、自転車に関する様々な事が動き始めている。県内に2つのプロサイクリングチーム(ブリヂストンサイクリング、レバンテフジ静岡)が拠点を構えたのもこうした動きの一つだ。両チームには、ふじのくにスポーツサポーターに就任してもらい、様々な取り組みをSNSで発信したり、イベントに参加したりしてもらっている。
トラックとマウンテンバイクの会場となる日本サイクルスポーツセンター周辺自治体および、ロードレース開催沿線自治体では、オリパラのレガシーをどのように生かすかの議論が進んでいる。同スポーツセンターについては、「自転車トレーニングヴィレッジ構想」があり、初心者からプロまで様々な階層の方が楽しめるコース整備や、アカデミーでの選手育成などを想定している。将来、伊豆に行けば自転車に関する事なら、産業から学会まで何でも集積するような場所になるといい。
富士スピードウェイがゴールとなるロードコースは、競技と一般の方が楽しめるイベントの2軸での設定を考えたい。競技の観点では小山町で開催されるツアー・オブ・ジャパンに周辺自治体と賑わい創出を実施したい。また、富士山麓のオリンピックロードコースの一部を活用した一般サイクリスト向けの「富士山チャレンジライド」を開催するなど地域にサイクルスポーツの文化を根付かせる取り組みを進めていきたい。


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