青山 地域で農業イノベーションを継続させる方法についてはいかがですか。
岩城 ここは、県の「ふじのくにフロンティア推進エリア」で、沼津市さんは「先端科学技術を活用した農業イノベーション創出エリア」として県に申請しています。
われわれは、研究拠点であるAOI–PARCと生産現場との連携を予定しています。例えばプチベールという機能性野菜がありますが、地元の農家さんが生産しやすい品種を増田採種場と開発し、農家の皆さんがもうかる仕組みを作りたいと考えています。また、ここには植物工場や先進農業に取り組む農家さんもいるでしょうから、将来的には農業の多様性が見られる地域になるといいですね。
渡邊 継続的な改革をするには2つの条件が必要と思っています。
1つは、生産者と販売者が一体で良いものを生み出すことです。例えば、愛鷹牛は地元から銘柄牛を出そうと、長泉の渡辺牧場と肉屋である私の先代とで1998年に立ち上げました。20年ほどは鳴かず飛ばずでした。ところが、国を挙げた地産地消政策で、一気にマスコミに取り上げてもらうようになり、それから徐々に認知していただけるようになりました。
2つ目は、やはり信頼と信用です。今回の野菜工場は、地権者が25人いました。当初、企業の担当者が電話をしても話を聞いてもらえなかったそうです。そこで、最初に私の名前を出してもらうようにしたところ、ほとんどの方に話を聞いてもらえました。ただ、残り数人の方にはなかなかご理解いただけず、約半年、足しげく通いました。そういう中で、地域の農業、観光、防災をテーマに活動する「白隠塾」という組織ができました。住民の方と情報交換しながらさまざまな活動を進めており、今回の工場進出でも、この活動が功を奏したと思っています。
山田 白隠塾の皆さんは原・浮島地区を愛していて、「自分たちがやるんだ」という気概を感じます。
地域協働は、住民と行政、事業者の方、今回の例では農家の方に、どうやって横串をさすかというのが重要です。それには、シビックプライド(住民が地元を良く知り、誇りを持つこと)を持つのが一番いいのではないかと思います。当市には「ぬまづの宝100選」がありますが、これは知る人ぞ知るスポットから、沼津港のような有名な場所まで、市民が自慢したい場所を100カ所選んだものです。シビックプライドがないと、市外の方に自信をもって地域の良さを伝えられないと思っています。原・浮島は白隠禅師というメジャーな存在がありますので、地域の絆も強いように感じます。 |
|
■渡邊好孝氏
沼津市商工会長
沼津市生まれ。2018年5月に現職に就任。沼津市内の商工業の振興、発展のために各活動を精力的にこなす。静岡県食肉事業協同組合副理事長も務める。渡邊精肉店本社代表取締役会長 |
|
■山田晃良氏
沼津市企画部政策企画課長
1993年4月に沼津市役所に入庁。沼津駅周辺総合整備事業、教育、広報などに携わり、2021年4月から現職。沼津市の重要事業の企画、調査及び総合調整等に取り組む |
|