2019年12月、川勝平太静岡県知事と長崎幸太郎山梨県知事は、医療健康産業政策の連携に関する協定書に署名した。両知事の間には静岡がんセンターの山口建総長のにこやかな顔があった。
実は、山口総長と長崎知事は高校の同窓。「長崎知事は開成高校の後輩で、山梨県選出の代議士になり、その頃からこの地域の未来について話し合っていた。開成の創始者である佐野鼎先生は富士市の出身なのでその縁も感じていた」と山口総長は語る。
山梨県は、機械電子産業が付加価値額の6割を占める。長崎知事は就任前から、医療機器産業を主力産業にできないか模索していた。「静岡県は医療機器生産の日本の中心地。その原動力が静岡がんセンターとファルマバレーセンター(PVC)で、山口総長が医療城下町をつくる、とおっしゃった。ならばぜひ連携したいと考えた」と連携の理由を挙げた。
機械電子産業と医療機器は親和性が高い。これまでは半導体装置などが中心だったが、波がはげしく県内経済の安定、ひいては雇用の安定につながらない。他方、医療機器産業は2040年まで右肩上がりで、グローバルに見ても成長市場だ。「これを本県の機械電子産業に組み込めれば、本産業のみならず、本県経済に安定した成長をもたらすことができる」と長崎知事。
そこで、県知事選の公約に医療機器産業振興策としてファルマバレーから繋がる山梨県メディカル・デバイス・コリドー構想を掲げ、19年1月に当選。当選の翌日には、山梨県庁の職員からPVCに連絡を入れている。
「開成の後輩の長崎知事が目指すメディカル・デバイス・コリドー構想への協力をお願いしたいという手紙を山口総長より頂いた。その後、正式に山梨県より話があって、即協定を結んだ」と川勝知事は連携の経緯を語った。 |