サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から「2022.10.27 静岡新聞掲載」

本年度、伊豆縦貫自動車道(以下、伊豆縦貫道)の河津下田道路のうち、河津側の約3kmが開通する。天城北道路が開通して約4年。沼津−下田間が85分に短縮された。将来的に、全線開通すると60分に短縮される。下田市役所を起点に、関東圏が約3時間の距離にすっぽり入る計算だ。10月の「風は東から」は伊豆縦貫道を取り上げる。現在の進ちょくや道路整備に伴う地域づくりについて、国土交通省中部地方整備局沼津河川国道事務所(以下、沼津河川国道事務所)の渡部正一所長をはじめ、関係者に聞いた。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ7

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道路で変わる伊豆観光 価値づくりと連携強化
■天城峠以南で初の高規格道路
■渡部正一沼津河川国道事務所長
本年度開通予定の約3km区間は、河津七滝を南に下った地点から建設中の仮称河津トンネルを抜け、河津町の逆川に至る。河津下田道路(II期6.8km)の一部で、現在の道は夏の間、大型車の通行規制がかかる区間だ。天城峠以南では、初の高規格道路の誕生となる。
沼津河川国道事務所の渡部正一所長は「局所的ではあるが交通事情がかなり変わると思う。大型バスなどもスムーズに運行できるので、例えば旅行会社の団体ツアーも組みやすくなるのでは」と語る。
伊豆縦貫道の完成まで、建設中の河津下田道路(I期5.7km、II期)と、天城越え区間(天城湯ケ島〜河津約20km)が残る。このうち、天城越え区間はすでに都市計画決定や環境アセスメントの手続きが進んでいる(図1)。
とはいえ、全線開通時期の断定は難しい。伊豆半島の急峻な地形に加え、社会情勢の変化なども複雑に絡む。しかし、2050年に伊豆半島の人口減少率が50%以上になることなどを考慮すると、この20年ほどがポイントになる。河津下田道路については、「10年もかけたくない、という思いで進めている」と渡部所長はいう。
(図1)伊豆縦貫道整備図
(1)東駿河湾環状道路(延長15.0km) ※沼津岡宮IC〜大場・函南IC間(延長13.1km)H26.2開通
(2)天城北道路(延長6.7km)
※修善寺IC大平IC間 (延長1.6km)H20.4開通
※大平IC(仮称)天城湯ケ島IC間(延長5.1km)H31.1開通
(3)伊豆縦貫自動車道(天城湯ヶ島〜河津)(延長約20km)
※都市計画・環境影響評価手続き中
(4)河津下田道路(II期)(延長6.8km)  ※事業中
(5)河津下田道路(I期)(延長5.7km) ※事業中
人口減少がますます進む中、いかに交流人口、関係人口を増やすかは地域にとって大きな課題。渡部所長は、道路行政からのアプローチとして、伊豆各地に点在する分岐点の拠点整備の重要性を挙げる。「伊豆全体を考えると、キーになるのは沼津と三島。そこで人をしっかり溜めて、いかに伊豆半島全体をプロモーションするか。その上で、伊豆半島各地に存在する交通の要衝、例えば伊豆の国市にある観光ハブの道の駅『いずのへそ』周辺、伊豆市の道の駅『伊豆月ケ瀬』や下田市の箕作(みつくり)など東西に向かう分岐点がある。すでに地元首長とはこうした絵姿を共有し検討を進めている」と語る。
イメージするのは「美しい伊豆創造センター」が打ち出している伊豆半島グランドデザイン。さまざまな地域がさまざまな個性(ブドウの房)を持ち、それらが地域やテーマ毎に連携し、重層的クラスターをつくりながら一体でまとまるものだ。「伊豆半島グランドデザインは大きな道しるべになっている。それを実行すれば行きつく先に明るい未来がある。その中で伊豆縦貫道は非常にコアな役割を担う」と語る。



■南海トラフの脅威軽減
伊豆縦貫道の終点、下田市の松木正一郎市長に、道路網整備への期待について聞いた。
■松木正一郎下田市長
危機管理の面からも、伊豆縦貫道の整備は待ったなしだ。10月28日に、道の駅「伊豆月ケ瀬」で南海トラフ巨大地震を想定した現地合同調査所運営訓練が行われる。
これは、地震発生時に同施設を現地前線拠点として使用する初の試み。国交省と、県、伊豆市、消防、自衛隊、警察など関係機関が一堂に会し、災害本部の立ち上げや連絡体制の検証、道路啓開及び救出救助活動などの手順を検証する。
政府は、30年以内の南海トラフ巨大地震の発生確率を「70〜80%」としている。背骨となる伊豆縦貫道から東西へ延びる肋骨道路は限られており、しかも国道136号は橋りょうが多く、西伊豆伊東線は土砂崩れが多発する。国道414号も天城峠は大雨でしばしば通行止めになる。震度8クラスの地震が起きた場合、天城以南の支援基地をどこにつくるのか。そこで、今回、伊豆縦貫道現状の最南端である道の駅「伊豆月ケ瀬」が前線基地に選ばれた。
渡部所長は「今回の訓練は、最も厳しい想定の中で県や自衛隊、消防など、各機関のトップが集まり、具体的に何をどこで誰が行うかを確認するのが目的」と語る。続けて、「こうした危機感と緊張感こそ、地域を運営する各機関のトップが共有して持つべきであり、そういった観点からも地元と連携した道路網の整備と危機意識の共有をしっかり行っていきたい」と表情を引き締めた。

利便性に甘んじることなく、愛され光り輝く存在であり続けたい。
サンフロント21懇話会会員 観音温泉 代表取締役会長 鈴木和江会長

進みゆく伊豆縦貫道の整備は、間違いなく私たち観光サービスに身を置くものにとって千載一遇のチャンス、感謝ですが、利便性さえ向上すればそれで良いのでしょうか?今後も伊豆地方がお客様に愛され、持続的に光り輝く観光サービスを提供させていただけるかどうかの試金石といえますね。
当館には、旅行作家の野口冬人先生が、約60年をかけて収集された書籍やビデオなどの資料が約3000点ございます。野口先生とのお付き合いは長く、娘がよちよち歩きだった頃から。先生が当館に来られた際に、「ここまで来るのは遠くて大変でしょう?」と問いかけると、「旅というのは、時間をかければかけるほど、新たな気持ちが生まれるのだよ。そういう面で観音温泉はとても良いところですね!」と言ってくださいました。その時に、この奥下田の自然や空気はお客さまにとって時間をかけてでも来る価値があり、旅の本質・原理原則がここにはあるのだと得心しました。
 地域企業がそれぞれに自助努力をし、磨き上げた光の点が今回の道路整備によってつながり、さらにお客様の利便性や安全性につながることで、ますますこの地域がエネルギー溢れる未来に進むことを願っています。



■企画・制作/静岡新聞社地域ビジネス推進局

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