サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から「2023.2.23 静岡新聞掲載」

県立静岡がんセンターの開院を機に、医療健康関連産業の振興と集積による、特色ある地域の発展を目指してきた「ファルマバレープロジェクト」。2月の「風は東から」は同プロジェクトを取り上げる。20年にわたり地域を牽引(けんいん)してきた同プロジェクトが、次の20年を見据え新たな地域づくり「医療田園都市構想」を立ち上げる。その概要と、超高齢社会の理想郷をどのように実現するのか、東部3市2町の首長に聞いた。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ10

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住民主役のまちづくりへ ファルマバレー第2章始動
■医療田園都市構想で 超高齢社会の理想郷を
ファルマバレープロジェクトは、この20年で静岡がんセンター、ファルマバレーセンターを中核機関として、ものづくり、ひとづくりの戦略により、高度な医療の提供と医療関連産業の集積を進め、医療城下町を築き上げた。これからの20年は、この医療城下町を基盤に、住民が安心して暮らせる超高齢社会の理想のまちづくり「医療田園都市」を目指す。
高齢化が進む本県で、住民に豊かな暮らしと充実した医療・福祉・介護を提供し、従来の取り組みである地域企業の強化や企業誘致を継続しながら、県外からの移住促進や地域経済の発展をうながし、さらには国際的な交流の舞台として世界にその姿を示していく。
本構想は三つの戦略を定めて推進する。
一つ目は「医療・福祉・介護による安心が実感できるまち」の実現。最先端医療を県民が受けられるサービスの充実や、これまでに蓄積されたがん診療と医療ものづくりを対象とした大学院「静岡がん研究大学院(仮称)」の整備を目標とする。
二つ目は「田園のゆとりが味わえるまち」の実現。静岡県の「豊かな自然」や「温暖な気候」、「広い敷地の住まい」や「豊富な食材」を活かした健康長寿の促進が目標だ。
三つ目は「都市の活力が生きるまち」の実現。「高所得が得られる就労の場」や「交通インフラ」「子育てしやすい環境」といった都市機能の拡充を目標とする。
本構想の推進を後押しするファルマバレーセンターの小桜充久常務理事は「本構想の実現には、市町や企業・団体等による取り組みの具体化が不可欠。特に、市町の特性を活かしたまちづくりに大きな期待をしている」と語る。市町等からの提案や意見を積極的に取り入れた構想の骨子をまとめており、来年度の早い段階で策定する予定だ。

■医療田園都市構想の取り組み

戦略 戦術
「医療・福祉・介護による
安心が実感できるまち」の実現
  • 最先端のがん医療環境の設備
  • 「生まれてよし 老いてよし」の医療・福祉・介護機能の充実
  • 大学院大学計画の推進による高度医療人材の集積
「田園のゆとりが
味わえるまち」の実現
  • 「住んでよし 訪れてよし」「生んでよし 育ててよし」の自然環境・住環境の設備
  • 豊かさを実感できる生活機能の充実
  • 食を中心とするヘルスケア対策の推進
「都市の活力が
生きるまち」の実現
  • 高収入が得られる「働いてよし」の産業集積
  • 首都圏へ通える交通インフラの強化
  • 「学んでよし」の教育環境の充実


県東部首長に聞く「医療田園都市構想とわが市町の未来」
鉄道高架推進で「住んでよし、訪れてよし」の住環境整備

ョ重秀一 沼津市長

中心市街地の沼津駅周辺総合整備事業は、市全体のまちづくりに大きなインパクトを与える。鉄道高架事業をはじめ土地区画整理事業などを総合的に行い、交通渋滞の解消や鉄道施設の跡地を活用した拠点施設の整備などに取り組む。これにより、南北の交通環境が劇的に改善され駅周辺の回遊性が改良されて「住んでよし、訪れてよし」の住環境が整備されていく。
本市は今年7月1日に市制100周年を迎える。これを契機に市民としっかりと連携し本市の魅力を市内外に広く発信していくとともに、次世代への新たなスタートの年と位置付け、自らまちに誇りを持ち、誰もが未来の沼津に夢を抱くような記念事業を推進していく。このような“ヒト中心”の取り組みを通じて医療田園都市構想の実現に向けた一助としたい。

経済発展と市民のウェルビーイングを両立

豊岡武士 三島市長

当市は主要施策として「ガーデンシティみしま」を掲げ、湧水やせせらぎなど自然と歴史を感じる街並みに、花を加え美しく品格のあるまちづくりを進めてきた。近年は、市民の愛着率や地価の向上に加え、移住者や企業から選ばれる街として成果が出ている。
もうひとつの主要施策「スマートウェルネスみしま」は健康づくりだけでなく、生きがいや絆づくり、産業振興やコミュニティづくりを通じて生活環境を豊かにし、人も街も健康で幸せにしていこうというプロジェクトだ。この10年で高齢者の“お達者度”が伸びているほか、幸福度調査でも高い結果が得られている。また、三島駅南口東街区再開発事業により賑わいと魅力のある街づくりと医療・健康機能の拡充にも力を入れる。
今後も医療田園都市の一翼を担うべく、引き続き医療健康産業のさらなる誘致を進め、高度な医療に支えられ安心して暮らせる住環境の整備を進める。心の豊かさや幸福度などの市民のウェルビーイングの向上も積極的に進める。

6つの取り組みで豊かな裾野市目指す

村田悠 裾野市長

医療田園都市構想と関連し、6つの取り組みを推進したい。
@医療のデジタル連携化と中核病院の設備投資等への支援―かかりつけ医と中核専門病院との連携を図るため、医療のデジタル化、オンライン診療を進めたい。Aパノラマロード沿線の健康・スポーツレクリエーション交流ゾーンの魅力向上―富士山のふもとの健康・スポーツレクリエーション交流ゾーンへの宿泊施設の誘致等を図り、シンボルエリアとしたい。B既存のふじのくにフロンティア推進区域周辺のさらなる充実―ウーブンシティの開所を見据えた住宅地の確保を進める。C地域資源・地勢を活かした農業収益力のある地域づくり―優良農地の継続的活用や六次産業化など多角的な施策を行う。D裾野市企業立地方針に基づく企業誘致施策の推進―新たな企業用地を確保する。E岩波駅周辺整備の推進―市北部地域の拠点としての交通結節点機能や生活利便機能を充実させ、魅力あるまちづくりの実現を目指す。

日本有数のがんセンターがある町として

池田修 長泉町長

長泉町はこの20年間、ファルマバレープロジェクトとともにまちづくりを行い、人口増加や地価上昇から「奇跡の自治体」と呼ばれるまで発展を遂げた。
日本有数のがんセンターがある町として、がん検診受診率日本一を目指し、がん検診の無料化や中学2年生の学校検診でのピロリ菌検査、がん患者の療養支援を行うなど、がん対策推進条例を制定し、がん対策に取り組んでいる。
子育て・教育支援として、全国に先駆けてこども医療費や第2子保育料の無料化、全小中学校普通教室へのエアコン整備を行うなど、きめ細かな支援で「子育てのまち長泉町」を充実させてきた。
町内には、東名高速道路を含む大動脈が4本走っており、広域交通の結節点としての良好な交通環境に加え、新たな企業立地支援制度を創設するなど、更に町の優位性を高め、医療健康産業の集積を図ることで、医療田園都市構想の実現を目指す。

「笑街(しょうがい)健幸の都市づくり」を推進

関義弘 清水町長

清水町では、第5次総合計画で目指す将来都市像を「くらしやすさで未来をともにつくるまち清水町」としてまちづくりを進めている。町には、名水百選に指定される柿田川が流れるなど豊かな自然が残され、医療機関等も多く、医療と職住近接が整った町である。
笑街健幸の都市づくりは、私の最も重要な政策の柱である。笑街健幸には「笑顔があふれ、いつまでも健康で活躍できることは、個人にとっても街にとっても幸せなことである」という意味を込めており、この取組が、健康増進と健康寿命の延伸に繋がるものと考えている。
本町のまちづくりには、公共交通の充実が重要となる。町では、将来都市構造のテーマとしてリボンシティを掲げ、多くの方が集まる柿田川公園やサントムーン周辺のエリアを結び目として、町内外の交流を促すため、公共交通をはじめとしたネットワークを形成し、将来の社会情勢の変化にも対応できる持続可能な町を目指している。



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