伊豆文学シンポジウム「井上靖と敦煌(とんこう)」 |
「道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思う頃、雨脚が杉の密林を白く染めながら、すさまじい早さで麓から私を追って来た」―。日本を代表する文豪・川端康成の「伊豆の踊子」は、伊豆市湯ケ島の天城山から始まり、川端自身の伊豆での旅行体験をもとにつくられている。本作は昨年、静岡舞台芸術センター(SPAC)が舞台化し、県内各地で上演された。この作品は過去6回映画化され、海外からの観光客が伊豆を訪れるきっかけにもなっている。
「しろばんば」で知られる井上靖は、幼少時に父親の故郷天城湯ケ島で過ごし、沼津市で多感な少年時代を過ごした。長泉町に文学館があり、天城湯ケ島や沼津の千本浜公園をはじめ県内各地に文学碑が建っている。他にも県東部・伊豆地域は若山牧水、三島由紀夫など、文人ゆかりの文学館や文学碑が数多く存在する。
こうした背景の下、川端康成、井上靖に続く新たな文学作品や人材を見出そうと、県は1997年に「伊豆文学賞」を創設した。伊豆をはじめとする県内の風土や地名、行事、人材、歴史を題材にした文学作品を募集している。
さらに昨年は、県が東アジア文化都市に選出されたことで文学ゆかりのイベントも数多く開催された。10月14日、15日の2日にかけて行われた「伊豆文学祭」は、シンポジウムをはじめ、映像ライブステージや朗読劇などさまざまな手法で文学を味わうイベントとなった。会期中、文学とまちづくりをテーマに「全国文学サミットin伊豆」が催され、伊豆市など県内外の自治体が文学のまちづくりを推進する共同宣言書が採択された。11月12日には伊豆文学シンポジウム「井上靖と敦煌(とんこう)」が開催され、井上靖の作品の舞台である中国・敦煌市と井上靖の故郷伊豆市をオンラインで結び、パネラーが井上をひきつけた中国西域の魅力について語った。
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