サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から「2024.7.26 静岡新聞掲載」

サンフロント21懇話会30周年記念 県東部首長リレーインタビュー

官民一体で県東部の活性化策を探る「サンフロント21懇話会」は、光輝く地域づくりに向けて研究・提言活動を行っている。来年6月には設立30年の節目を迎える。それを記念して「風は東から」では、懇話会と二人三脚で県東部を盛り立ててきた20市町の首長にリレー形式で登場いただく。7月は、伊豆の国市の山下正行市長と伊豆市の菊地豊市長に、地域資源を活用した観光振興や広域連携の在り方について聞いた。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ4

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伊豆の国市 市制20周年を機に新生「伊豆の国市」誕生へ
■市民との対話を重視
■山下 正行 伊豆の国市長
伊豆の国市出身。1980年農林水産省に入省し、在米国日本大使館、在ジュネーブ日本政府代表部などにも勤務。国際部長、農林水産大臣官房総括審議官(国際)、食料産業局長などを歴任し、2015年に退官。日本中央競馬会常務理事を務めた後、21年より現職。

来年、本市は市制20周年を迎え、これを機に「市民憲章」を策定する。協働・多様性・インクルーシブ(誰も取り残さない、全員参加)・ウェルビーイング(健康かつ幸福)・郷土への誇り・グローバルといった内容・思いを盛り込む予定だ。
少子高齢化は待ったなしの課題だ。合併時5万人を超えていた人口は現在約4万6千人となった。災害時だけでなく、地元のお祭りや伝統行事などの担い手不足など、今はあまり顕在化していないが将来的な危惧は持っている。その意味においても子育て対策は最重要課題の一つ。本市は、子育て支援策をパッケージ化し、市民に分かりやすく伝えている。教育面での特徴は、「教育格差」をなくしたい、英語に早く慣れさせたいとの思いから、通常、小学3年生から行う英語教育を、市独自の施策として保育園・幼稚園時から行っている。
高齢化対策は、地域包括ケアがしっかりしており、年をとっても住み慣れた場所でできるだけ長く暮らせる工夫をしている。加えて今後は、健康寿命の延伸も重要な課題であり、健康づくりのためのフォーラムの開催、「リエイブルメント(元気な自分を取り戻す)」の取り組み、ウォーキングの推奨などに力を入れていき、日本一の健康寿命のまちを目指したい。
農業関係については、市長就任以来、有機農業の振興に取り組んでおり、実証圃場で収穫した米や野菜を学校給食に取り入れている。今年は有機農業の推進に向けた協議会の設置と「オーガニックビレッジ宣言」を行う準備をしている。新規就農者の受け入れも活発で、特に県内有数の生産量を誇るミニトマトは先輩就農者が新規就農者を指導するという好循環を生んでいる。
様々な施策を展開するうえで重要なのは、市民の声に耳を傾けること。その一環として、市長座談会「市長と語ろう」を開催しており、昨年度は26グループと意見交換を行った。一昨年までの地区懇談会では、行政からの一方的な説明に終始してしまったため、昨年度からは各グループが聞きたいテーマを中心に対話を重ねている。今年度は既に6回行っており、先日は子育て中のお母さん方と、子どもたちの居場所づくりについて意見交換した。

■英語教育の現場


■歴史遺産を観光・教育に活用

文化財展示施設完成イメージ図

観光振興にも力を入れたい。温泉やイチゴ狩りはもちろん、市内には縄文時代から現代にいたるまで数多くの文化財が存在する。縄文土器や山木遺跡から出土した弥生時代の「ねずみ返し」は学術上貴重なものだ。願成就院の国宝の仏像、幕末、品川台場を建造した江川坦庵公の屋敷でもあった「江川邸」、明治日本の産業革命遺産「韮山反射炉」など、枚挙にいとまがない。
このような文化財を紹介する「文化財展示施設」の建設計画が進んでいる。韮山時代劇場に隣接して、展示室、交流スペース、展望スペースなどを整備予定だ。子どもたちの歴史教育の拠点になるし、市内史跡を周遊する歴史観光の拠点にもなる。
また、伊豆地域は自転車の聖地とも言えるところであり、特に狩野川沿いはサイクリングに最適な環境だ。加えて、昨年10月にオープンした「川の駅伊豆城山」にはドッグランも整備され、家族の一員である犬と一緒に泊まれる宿泊施設も伊豆長岡温泉にいくつかあり、今後は「いぬの国市」と呼ばれるほどの環境となることを期待する。
来年は、市制20周年、韮山反射炉世界遺産登録10周年に加え、狩野川放水路60周年、そして北条政子没後800年など多くの節目を迎える。市民の声に耳を傾けつつ、豊富な資源を活用した住みやすいまちづくりにまい進していく。



伊豆市 “心”の境界線なくし伊豆のリブランディングを
■充実した医療体制と観光振興
■菊地 豊 伊豆市長
伊豆市出身。1981年防衛大学校卒業後、陸上自衛隊入隊。国際モザンビーク平和維持活動、在ドイツ日本国大使館防衛駐在官、第5普通科連隊長、内閣衛星情報センター主任分析官などを歴任、2007年一等陸佐で退職。08年4月伊豆市長に就任し、現在5期目。

本市がこれからも守るべきもの、それは、天城連山、狩野川、駿河湾の自然環境と考える。経済産業は時代に応じて変わっていくが、観光業は今後の10〜30年活力を持つ基盤産業だ。本市の年間観光交流客数は350万人。この大きなマーケットを活用し観光業を発展させることで、さらなる人口減少に立ち向かう力にしたい。
実は本市には、医療機関が五つある。中伊豆温泉病院は昨年12月に移転・新築された。伊豆赤十字病院は、救護と医療、そして災害時の救援の役割を持つ。いざ大規模災害が起きたときはDMAT(災害派遣医療チーム)も来てくれる。これほど充実した医療体制があることを積極的に市民にPRしていきたい。
また、就任以来、学校の統廃合や施設の再編成などを行い、小さくても「筋肉質の市政」を進めてきた。老朽化したり使われなくなったりした施設は廃止し、市が運営する観光施設は民営化の速度を上げていく。
県が進める医療田園都市構想での本市の在り方は、「豊かな農山村や温泉を使い健康増進に貢献する」だろう。最近では自然農法で作ったコメや野菜が評判となり引き合いも多いと聞く。森林セラピーなども活用し、観光客にも健康を提供していきたい。
■移転・新築され2023年12月に開院した中伊豆温泉病院



■「伊豆はひとつ」を推進

伊豆半島の魅力を高める重要な要素として、地域間協力は欠かせない。例えば、道路。箕作(下田市)から松崎町までの道路改良をすれば、下田を訪れた人たちに時間の余裕ができ、周辺を回遊しやすくなる。市内でいえば、船原峠の先の難所を改良した結果、修善寺から土肥までのアクセスが良くなった。時間にすれば3〜5分だが、運転のストレスは格段に減った。新たな道路を作ることも必要だが、今ある線形を改良することでずいぶん印象が変わるだろう。
観光プロモーションも伊豆全域で考えたい。ホタル祭りでセンスの良いポスターを作り、5月は三島、6月は全域、湯ヶ島は7月まで見られるとJRなどに掲出すれば、首都圏から多くの観光客が訪れる。サクラもしかり。1月は土肥、2月は河津、3〜4月は熱海や伊東などとすれば、長期にわたり観光客が訪れる。温泉と食、自然の豊かさを活用したヘルスツーリズムに至っては、一年中全域で訴求可能だ。首都圏から約2時間で温泉があり、海山があり、食材がある。こんな地域はなかなかない。
最近の統計(2022年度)によると、伊豆半島の宿泊客は960万人、観光交流客は3千7百万人。宿泊費の平均は、1人当たり2万3千円、宿泊以外の個人消費額は5千〜2万円と幅があり、仮に1万円とすれば、宿泊費と合わせて6千億円になる。道路の改良や広域連携を進め、滞在時間を増やすことで2百億円程度は容易に上がるだろう。
伊豆半島の場合、三島市、長泉町周辺とそれ以南、特に西伊豆、松崎、南伊豆地域とでは交通事情が大きく異なる。この違いすぎる部分をどう補いつつ、全体で発展していくか。ここについては、「美しい伊豆創造センター」の活躍に期待したい。伊豆半島全体のマーケットを再評価し、訴求力のあるプロモーションを行うなど、伊豆の連携を視野に入れたリブランディングを提案したい。

■伊豆を代表する温泉地「修善寺温泉」


■企画・制作/静岡新聞社地域ビジネス推進局

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