サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から「2024.8.23 静岡新聞掲載」

サンフロント21懇話会30周年記念 県東部首長リレーインタビュー

官民一体で県東部の活性化策を探る「サンフロント21懇話会」は、光輝く地域づくりに向けて研究・提言活動を行っている。来年6月には設立30年の節目を迎える。それを記念して「風は東から」では、懇話会と二人三脚で県東部を盛り立ててきた20市町の首長にリレー形式で登場いただく。8月は、熱海市の斉藤栄市長と伊東市の小野達也市長に、観光振興の新たな財源確保や、地域コミュニティの維持・活性化について聞いた。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ5

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観光振興と地域コミュニティ 持続可能な未来への道
■「熱海2030ビジョン」を策定
■齊藤 栄 熱海市長
1963年生まれ。東京都出身。88年東京工業大大学院修士課程修了後、国土庁(現国土交通省)入庁、土地局国土調査課専門調査官等を歴任し99年に退官。学校法人勤務、国会議員政策秘書を経て、2006年熱海市長に就任し、現在5期目。

2018年に「熱海2030ビジョン」を発表した。本市は平成の30年間で、人口が23%の減少、高齢化率は2.8倍、税収が30%減となり、将来自治体として立ち行かなくなる危機感があった。そこで、同ビジョンでは、人口減少社会であっても、経済が持続的に発展し、豊かな市民生活が維持できる新たな仕組みづくりを基本的な考えとしている。
まず、観光振興については、新たな財源の確保として「宿泊税」を導入する。観光業は投資産業と言ってもよく、常にリニューアルが必要だ。宿泊税の導入で、新たに年間7億円ほどが確保できる。この財源を観光施設の刷新などに活用し、観光客に還元していく。また、熱海はV字回復を成し遂げたと言われるが、10年をかけ、熱海の新たなイメージをプロモーションし続けてきた。「意外と熱海」観光ブランドプロモーションは、四季ごとのテーマを決め、ターゲットに合ったコンテンツとビジュアルを作成することを繰り返した。並行して行った番組ロケの支援を24時間365日対応する「ADさんいらっしゃい!」は数多くのメディア露出を可能とし、若年層を中心に熱海ファンを増やした。
次に、人口減少対策では、今後、住宅政策が重要と考えている。特にファミリー層が住みやすい環境を整えることが求められる。これまでの市の住宅政策は、市営住宅の整備に重点が置かれていたが、今後は民間の投資促進や、空き家の利活用に力を入れていく。また、旅館・ホテルの従業員寮建設の補助制度も今年度からスタートする。こうしたことが人口減少対策だけでなく、人手不足対策になると考える。

■熱海の魅力を幅広く紹介する「意外と熱海」


■防災への取り組みを市民と二人三脚で

伊豆山被災地域 河川改修工事の様子

地域コミュニティの維持・活性化も重要な問題だ。熱海は、もともと住民同士の結束が強い土地柄で、これは大きな財産だ。現在、市内に81の町内会があるが、高齢化や少子化の影響で、お祭りの担い手不足のみならず町内会運営が難しくなってきている。町内会は、災害など有事の際の対応や高齢者の見守りなど市民生活の重要な役割を担っている。
そこで、現在町内会が行っている事業をより効率的な運営に見直す必要があるだろう。例えば、運動会と防災訓練を一緒に行うといったことだ。また、各町内会が持っている事務局機能を集約化することも考えられる。行政と町内会がどのような形で協働し、地域コミュニティを維持していくか。これもまちづくりには欠かせないテーマと考えている。
伊豆山土石流災害から3年が経った。昨年8月に不安定土砂の撤去が終わり、立入禁止区域が解除され、復旧・復興が本格化している。現在20数世帯が帰還し、夜の被災地域に明かりがともるようになった。今後は河川や道路に加え、消防団詰所や防災コミュニティセンター等を含め26年度末までに整備を完了させる予定だ。
防災面でいうと、市の危機管理課と町内会、自主防災会が連携し、防災の出前講座や「わたしの避難計画(※)」づくりを進めている。記憶に新しい今年1月の能登半島地震の際は、発災当日に消防緊急援助隊を派遣した。伊豆山土石流災害での避難所運営やがれき処理などのノウハウを、被災地で役立てる場面も出てきている。

※今後起こりうる大規模災害に備えて、一人ひとりが「いつ」「どこ」に避難するかを事前に整理するもの



観光は量から質への転換を 市制100周年へまちづくり加速
■動画再生2000万回の豊かな自然
■小野 達也 伊東市長
1963年生まれ。伊東市出身。82年静岡県立焼津水産高校水産製造科卒業後、民間企業を経て、87年株式会社丸達水産を開業、代表取締役就任。2005年に静岡県議会議員に初当選し3期つとめ、17年に伊東市長に初当選し現在2期目。

本市は豊かな自然と温泉を最大限に活かした観光振興を進めている。特に大室山や城ヶ崎海岸などの景勝地は、噴火の恩恵を受けた自然の産物であり、多くの観光客を魅了している。 観光の回復状況については、コロナ前の90%まで回復しており、2023年には観光交流人数が608万人に達した。 観光プロモーションにも力を入れており、特にステイホーム期間中に行った海外向けのYouTube動画の配信は、2週間で2000万回再生を達成した。本市を訪れる主要10か国に配信し、これにより欧米やアジアからの観光客が増加している。 伊豆半島は東も西も美しい海岸線が広がっている。特に東側では、大室山からの溶岩が城ヶ崎海岸を形成し、海の中にまで流れ込み、ここでしか見られない光景を作り出している。ジオパークに認定される前から、海のジオサイトとしてダイバーの間では有名であった。これも一つの観光ブランドになっていると思う。 教育旅行の誘致も組織的に進めており、テーマやアクティビティの多さから中学生の修学旅行先として選ばれている。多様な魅力を発信することが大事であり、個人客の増加とともに「量から質」への転換も大切だと考えている。 一方、人口減少は大きな課題である。子どもたちは、一度は高等教育や仕事のために首都圏などに出ることが多いが、以前はある程度時間が経つと地元に戻ってきたのに対し、最近ではそのまま戻らないことも多く、悪循環になっている。この解決のため、奨学金の補助制度などを積極的に設けている。

■海に流れ込んだ大室山の溶岩が、海中で独特の地形を形成している



■長期ビジョンへ市民の声を

まちづくりは、観光基本計画や総合戦略、地域福祉計画などを通じて、SDGsな取り組みを具体化している。民間企業との連携協定も活発で、人材不足対策などを一緒に進めている最中である。
津波や地震、豪雨災害に加え、伊豆東部火山群による火山災害についても対応する必要があるため、常に緊張感をもって危機管理に当たっている。1989年に海底火山の噴火を経験したこともあり、広域避難計画の策定やハザードマップの全戸配布、津波避難協力ビルの指定などを行っている。今年1月の能登半島地震の際は、4日の仕事始めの幹部会議で危機管理手順の見直しを指示した。また、災害に備え、自主防災会への資機材の配布や避難訓練も定期的に実施している。
現在、伊東駅前広場の再整備、新図書館の建設、文化ホールの移設の検討が進められている。これらのプロジェクトは、市の玄関口としての機能強化や文化の向上を目指しており、長期的なまちづくり計画に基づいて進行している。特に新図書館は、今の子どもたちが親になる頃には文化拠点として重要な役割を果たすことだろう。
タウンミーティングはすでに8年目。市長、副市長、教育長が直接市民の声を聞く貴重な機会である。23年後の市制100周年に向けては、PTAやJC、JAの若手で構成する「未来ビジョン会議」で、さまざまな意見を集めている。市民とのコミュニケーションを強化することで、市民自身がまちづくりの主役であると感じられるような取り組みを進めていきたい。

■市民との対話の場「タウンミーティング」


■企画・制作/静岡新聞社地域ビジネス推進局

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