サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
トップ 最新情報 政策提言 活動内容 サンフロント21懇話会とは 飛躍 風は東から

県東部地域連合「ひかり輝く地域づくり」に向けて

 県東部特集「風は東から〜ひかり輝く地域づくり」の第8回です。
 毎月1回、県東部と関わりの深い各界の方々にご登場いただき、県東部の将来像についてさまざまな視点から光をあてていきます。案内役はサンフロント21懇話会アドバイザー、静岡産業大学国際情報学部教授の大坪檀氏。
 今回は下田市長池谷淳氏、下田市在住の女優有馬稲子氏にご登場いただき、下田の魅力と今後の観光のあり方などについて対談していただきました。
風は東から
3周年記念  ●対談シリーズ��8
バックナンバー


「開国の町」PRに本腰 飾るより素朴さを大切に

有馬稲子(ありま いねこ)氏
有馬稲子(ありま いねこ)氏
昭和23年宝塚歌劇団に入団。以後、映画、テレビ、舞台で活躍し、平成7年紫綬褒章受章。代表作に舞台「はなれ瞽女(ごぜ)おりん」「越前竹人形」等。平成2年より下田市民。女優。
歴史を見直し、将来を考える。
観光地の原点はそこから見えてくる
大坪 私は以前、ハーバード大学の客員研究員としてボストンを訪れた時に、ある店でペリーが下田に来航した際の報告書を見せてもらいました。その中に数点の版画が入っていたのですが、それが下田の絵だったんです。当時から静岡県の仕事をしていた私は、みんな大事なことを忘れている、日本の近代の歴史はこの下田から始まったんだ。こんなすばらしいことはもっと世界中の人に知ってもらいたいと痛切に思いました。
池谷 おっしゃる通りこの下田は日本の国際化の門戸を開いた、窓をおそるおそる開けたという歴史的な場所です。ですからそれを大切にしたい。現在、「開国の町」をテーマに下田の歴史、港の歴史が一望できるような資料館、博物館の建設を予定しています。そこには物産の交流館や日米修好の歴史が研究できる施設も併設したいと考えています。
大坪 昔は漠然と旅行に行っていたものですが、最近は勉強するために旅行するという人も多いんです。何かを見て学ぶ、勉強がレクリエーションになった。
池谷 こういった古い歴史や古いものを大事にしていくことが今後の観光地に求められると思います。伊豆の温泉地はみんな同じというのではなく、むしろその土地土地の個性を生かした観光地でなければなりません。2000年の伊豆新世紀創造祭を機に、心優しい本物を大事にする下田を作ろうと努力しています。
有馬 私は仕事柄全国の観光地をたくさん見ていますが、結論として言えることは素朴になることだと思います。今の人はすごいアンテナをもっていて、京都で昔からやっている名もない、だけどおいしいお饅頭屋さんに行列ができるんです。観光地、観光地と言わなくてもその土地本来の素朴さを取り戻し、古い町並みや伝統の味といった昔ながらの良さを守っていれば自然に人は集まってくるのではないでしょうか。


歩いて楽しめる遊歩道、四季折々の花の風情。
いかに情報を発信するかがいまの大きな課題
池谷淳(いけたに きよし)下田市長
池谷淳(いけたに きよし)下田市長
昭和40年カネヤス商事代表取締役、昭和46年より下田市議会議員4期を経て昭和59年より現職。主な著書に「手づくりの町を求めつつ」「ひとりごと」等。下田市出身。
大坪 下田の観光政策については、どういった取り組みをされていますか。
池谷 市長になってすぐ、伝統的建造物保存条例を作りました。これは観光資源となっているなまこ壁の修復費用を半分市が負担するというものです。あわせてペリーロードやハリスの小径、松蔭の小径、アロエの道など、歩いて楽しめる遊歩道の整備を行っています。ペリーロードとハリスの小径は「静岡の道百選」にも選ばれました。また爪木崎では群落していた水仙に手を加え、岬全体が白い花で覆われる一月の水仙まつりには六十万人が訪れます。下田公園には空堀に植えたアジサイを見ようと三十万の人出でにぎわいます。このようにこれからの下田は昔の風情を感じられる、見て歩けて四季折々に自然が楽しめる観光地といった方向で生き残りを図りたいと考えています。
有馬 ただ残念なことに、下田に来て真っ先に目につくのはみやげ物屋。おみやげより先にもっと町を散策してほしい。ここには安政の時代からの歴史があって、ペリーロードや晩年お吉が営んでいた小料理屋の安直楼、春には稲生沢川の桜がとてもきれいですよね。歩いてすぐ行ける距離なのに、そこにたどり着くまでの情報が示されていない。まったく惜しい気がします。観光客の目にもすぐ止まるような大きな案内看板ですとか、手軽に持ち運べる散策マップのようなものがあるといいですね。



大坪 檀(おおつぼ まゆみ)さん
大坪 檀(おおつぼ まゆみ)さん
静岡産業大学国際情報学部教授。サンフロント21懇話会アドバイザー
まずは住民の意識改革から。
「下田ならでは」をどう演出していくかが生き残りのカギとなる
大坪 下田は伊豆半島全体の観光のへそになると思うんです。ここを中心に伊豆半島を周遊できるようになればいいですね。下田へのアクセスについてはどうお考えですか。
池谷 現在、平成二十四年の伊豆縦貫道の全面開通をはじめ、テクノスーパーライナーの横須賀就航の準備などを進めています。確かに交通渋滞へのクレームは大変大きいのでアクセスの整備は必要です。しかし、それよりも大事なのはここへ来たときに下田はひと味違うぞといったものをお客様に提供できることだと思います。
有馬 今は海外をはじめ魅力のあるところがたくさんありますでしょう。それに負けない下田の魅力をいかに引き出すかではないでしょうか。それから下田に住んでいて常々私自身感じていることなのですが、東京の友人を案内したり買い物に行ったりすると必ずといって歩道が狭い、物価が高いと言います。そういった外から来た人たちが「見て感じた」ことに耳を傾けるのもとても大切だと思います。
大坪 サービスをする側からでなく、受け手からの目線というのが何より大切です。それには観光に従事している人、市民の人たちの観光に対する認識を変えることが必要ですね。
池谷 うまいものが食べられて芸者衆がいて、というワンパターンの観光地というのはがらがらと音を立てて崩れてきた。少し前までは旅館やホテルがぜい沢なものを用意すれば、観光客は満足した。普段の生活とは違う「非日常」が体験できたからです。それが生活レベルの向上で、“ぜい沢の質”が問われるようになってきた。庶民の日常生活と観光地の演出する非日常に差がなくなると、次に求められるのはそこでしか食べられない、そこでしか見られないものではないかと思います。幸いここには食をはじめ、豊富な自然、古くからの歴史、人情と素材はたくさんあるのですから、いかにそれらを受け手の気持ちをほぐし、安らげるように演出していくか。いっぺんには無理でしょうが、そういった工夫を徐々に組み立てていくことが下田を含めた伊豆の課題だと思います。
有馬 それにはもっと素朴になって欲しい。まちづくりにしても映画のオープンセットのようなのはやめてほしい。こんなに素晴らしい下田の良さをきらびやかに塗装しないでいただきたいですね。
大坪 おいしい物を食べて温泉に入るだけが観光という時代ではなく、歴史を知る、過去を見直して将来を考える、そういったことも観光資源なんですね。ここは日米のみならず日露修好の歴史の地です。ここから新しい観光の歴史が始まることを期待しています。


サンフロント21懇話会からのメッセージ
開国のまち下田の情報発信


松井大英(まつい だいえい)さん
了仙寺住職
サンフロント21懇話会運営委員
松井大英(まつい だいえい)さん
松井大英(まつい だいえい)さん
了仙寺住職

サンフロント21懇話会運営委員

嘉永七(1854)年、日米和親条約が締結され、下田は日本で最初にアメリカ人が自由に往来することができる町となった。それはまた下田が、一般人が直接的に外国人と接触することを許された日本で最初の民間異文化交流の場所となったことを意味している。そしてこの「異文化交流」こそ下田が今後、全国に向けて情報発信できる最大のテーマではないだろうか。
私はここ十年、東京で在日外国人のために仏教セミナーを企画運営しているが、その参加者である外国人が口を揃えて言うのは「日本の文化について知りたいのだが、ほとんどの日本人は質問されてもまったく答えられない」である。年中行事や慣習など、日常的に行われていることの意味を理解している日本人は一体何人ぐらいいるのだろう。近年、『国際化』が叫ばれ、外国に関する情報はあふれているが、真の『国際化』とは相手を理解するだけではない。相手に自分を正しく理解させることも必要不可欠である。その意味で『異文化交流』『国際化』の原点は自分の文化の理解にあるといっても良いだろう。
サンフロント21懇話会では、下田に『日米修好センター』の設立を提言しているが、異文化理解と自文化理解の両方を基礎とした異文化コミュニケーションについての情報発信を下田に望みたい。それは横浜でも、神戸でも、長崎でもできない、全国で下田だけに許された特権であり、責務であると信じている。


■企画・制作/静岡新聞社営業局

▲ページトップ
入会案内お問い合わせ事務局案内リンク Copyright(c) SUNFRONT21.�ALL RIGHTS RESERVED.