サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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「伊豆観光圏を積極的に活用する〜今、何が必要か」
<コーディネーター>
中山 勝 氏(企業経営研究所常務理事・サンフロント21懇話会TESS研究員)
<パネリスト>
石井 文弥 氏(伊東観光協会長)
鈴木 達志 氏(伊豆体験型観光協議会長)
渡井  務 氏(県観光局長)
坂元 英俊 氏(阿蘇地域振興デザインセンター事務局長)

伊豆観光圏を積極的に活用する〜今、何が必要か

中山 着地型観光、あるいは体験型観光、まちづくり交流型観光という言葉をよく耳にします。共通のニュアンスとして、これまで観光用だと考えられなかったありのままの地域の魅力を生かしていこうということが最大公約数なのかなと理解しています。伊豆観光圏もその一環だととらえることができると思います。
 このような事柄を念頭に置き、伊豆観光圏では何をしなくてはいけないのか。また、実行していく上での課題などを皆さんと議論していきたいと思います。スタートは石井さんにお願いしたいと思います。伊豆の観光の現状、伊豆観光圏の目的、現在の活動内容についてお話しいただけますか。


観光圏を契機に新たな需要の掘り起こしを


中山 勝氏

石井 4月28日に「伊豆観光圏」の認定を受けまして、7月に本年度の総会を開いたばかりです。その中で一番大きな問題になっているのは、動かす組織がどうあるべきかということとコアの専任の事務局スタッフを置かないと機能しないだろうということです。認定に向けかなり短い時間で仕上げましたので、その中身についても十分検証しなければならないでしょうし、それと財政問題、事務局運営費をどう捻出(ねんしゅつ)していくか。この辺が大きな課題だと思います。
 伊豆地域の観光の状況ですが、県の統計資料によりますと、平成3年には6300万人の観光客があったわけです。それが平成20年には3900万人と38%減少しています。これは大変な数字だと思います。平成16年の台風22号、23号の直撃、18年の伊豆東方沖地震、19年の愛地球博など伊豆の観光のマイナスの理由ははっきりしているようです。
 近隣の箱根と山梨県の一部を調べますと、箱根も大体2000万人ぐらいでほぼ横ばい。山梨県の富士五湖周辺、富士吉田から大月近辺の東部エリアに平成10年度対比では43%、740万人増えています。
 伊豆半島の最近の特徴を見ていきますと、宿泊単価が4万円程度と高単価のところと7000円前後の安い宿と二極化が進んでおり、中間帯が客単価の安い方に引っ張られているということです。旅行の予約をインターネットを使って自分でやる世代が増えてきて、大手のJTBが本年度200店舗を閉めるという話を聞いています。ネットとしては新興の「じゃらん」などの比率が相当高くなっているようです。
 小グループ化、個人客が多くなって女性中心といいますか多様化し、団体旅行は皆無であると。人気のあるのは花めぐり、B級グルメとか、市民マラソンとか健康志向で、こういったところへの参加が非常に多くなっています。最近の高速道路のETC無料化で安く遠くへという傾向は否めないと考えています。2月ぐらいは花のお客さんは多いのですが、いわゆるお金の掛からない施設への立ち寄り、観光施設などでの土産物も余計なものは買わないという話も聞いています。
 そういった中で私も観光協会は時代の要請から少し乖離(かいり)が始まっているのではないかと考えております。行政の方たちにも、ぜひその辺の視点からもお考えいただきたいと思います。伊豆半島の観光協会はほぼ行政などからの委託事業的な形で支援をいただいています。イベント、観光プロモーションという昔ながらの手法でやられている。これはこれで一定の役割があるわけですが、基調講演にもありましたとおり、地域が繁盛する運営会社といいますか、いろいろな観光業者、NPOの皆さんなどの活動を総合的にコーディネートする機能が必要ではないかなと思っています。それらの機能をうまくコーディネートして地域の皆様もハッピー、来場するお客様も伊豆らしさ、地域の魅力を感じる。こういったものを提供していく時代がもうすでに来ているし、これをどんどんやっていかないと駄目ではないかと思います。
 観光圏が地域認定を受けて、県も一定の補助を支援していただけるということですので、ぜひこの観光圏を一つの契機に広がりのある観光のスタイルを提案し、新たな需要を掘り起こしていくことが必要ではないかと思っております。


テーマとストーリー性を踏まえ体験プログラム


中山 鈴木さんは西伊豆で体験型観光をされています。具体的にどのようなプログラムをやられているのでしょうか。

鈴木 ジョイズ、「西伊豆いきいき漁村活性化協議会」は、平成20年度に民間24社を主体とし発足しました。この協議会は「伊豆は一つとして動こう」と考えて起こした組織です。中身は体験指導者、宿泊業、食事どころ、お土産、交通の各業者が集まって伊豆を盛り上げていこう。それには体験を主体にやっていこうと始めたものです。今は各エリアで体験プログラムを着々と準備してお客様を迎えています。
 例えば西伊豆エリアとして「西伊豆ほんもの海遊び2010」というプログラムを実際に動かしています。私たちジョイズと西伊豆町、漁協、民宿連合会が手を取り合って西伊豆町を何とかしていこうと取り組んでいます。特に漁業の衰退は目に見えておりますので、漁業に関するものをつくり、新しい着地型観光として盛り上げていこうというプログラムを作りました。
 中身を少しお話ししますと、これは全て地元の漁師さんや農家さんたちが指導にあたっています。例えば、「船長気分で櫓漕ぎ体験」、これは西伊豆町の田子集落で実際に昔、かつお船に乗っていた漁師さんたちが「櫓で船を漕ぐという体験を後世に残していきたい」という強い思いでやっているボランティア組織があり、ボランティアではなく事業としてやった方がいいのではないかと提案し、体験指導者になっていただくプログラムを作りました。
 漁協とどうかかわるか、悩んだのですが、漁協の方から「沖のいけすにタイの稚魚がいる」と話があり、私たちは櫓漕ぎ体験にいけすの餌やりをプラスして1つのプログラムにしたんです。お客様の反応は上々で、今まで地元の人には見えていなかった宝物が新しく出来上がりました。まず、テーマとストーリー性を踏まえた体験プログラムを私たちは作っています。
 西伊豆いきいき活性化協議会は漁協と町、ジョイズで組んでいるのですが、役割分担を明確化しています。例えば地域間の調整役をお願いしているのが西伊豆町、商品開発として漁協と窓口を分けています。そして一番大変な受け入れ窓口をジョイズが受けて、漁協の人たちや体験指導者の元漁師さんに負担が掛からないようにしたところ大変好評です。
 西伊豆町は堂ヶ島という大温泉エリアを持っていまして、そこには大型のホテル、旅館があります。お部屋全てにチラシを置かせていただき、前日予約でオーケーにしたところ、反応もかなり良くなっています。
 一番大事に思っているのが安全対策です。安全なくして人を受け入れてはいけないと考えています。そのために初級体験指導者の育成ということでインストラクターの育成事業も行っています。

中山 体験型プログラムの課題は何ですか。

鈴木 課題はやはり人です。人づくり。いいプログラムがあっても受け入れできる人数は少ない。同じプログラムでも何人かインストラクターかガイドさんがいれば同じような空気でサービスができます。ですから人が今、課題です。


いろいろな層の方が集まって立ち上げた伊豆観光圏


渡井 務氏

中山 渡井さん、伊豆の観光圏についてお願いします。

渡井 先に県内全体のお話をさせていただきますと、昨年6月に富士山静岡空港が開港して1年間で63万人の方にご利用いただきました。中でも就航先である北海道、九州、あるいは韓国、中国からのお客様も直接静岡に来るようになったことが大きな出来事だと思います。県内の宿泊客は減少傾向にありますが、この中で空港の開港を機に、伊豆半島に限らず、県内の観光業者だけではなく、行政、これまで観光にかかわってこなかった方々も静岡県に人を呼ぶにはどうすればいいのかということを真剣に考え始めていることが大きな変化ではないかと思っています。
 また、10月には羽田空港の4本目の滑走路が出来まして国際化が進むということですので、大きな流れとして東アジアを中心とした海外の観光客が確実に伊豆にも来るチャンスが広がります。加えて中国のビザの要件も緩和になりますから伊豆観光圏の認定はまさしくタイミングを得たことではないかなと思います。
 観光圏は、今2市3町ですが、伊豆半島全体を考えますともう少し圏域の拡大が必要ではないかと思います。あわせて隣の箱根・足柄観光圏との連携も不可欠になってきます。伊豆観光圏の場合は、地域の民間観光業者をはじめ経済団体の方、実際に体験型観光に取り組んでいる方などいろいろな層の方が集まって立ち上げたということが大きいと思います。
 全国では45の地域が観光圏に認定されていますが、2年たってもパンフレットは出来たものの具体的な観光の取り組みとして、まだ誘客の動きが出来ていないと聞いています。伊豆地域の皆さんが動き出したということは大きな力ではないかと思っています。
 観光圏の事業化に当たりましては県で出来るだけフォローしていくことを考えています。事務局体制ですが、実際にエンジンとなるものがまだまだということですので、これについては地域の皆さんが主体になると思いますが、県も相談に乗りながら作っていければと思います。
 もう一つ、行政で出来ることとしては、外国人観光客の受け入れを考えますと、例えば鉄道駅、バスターミナルといった公共施設などでの案内の多言語化を粛々と進めていくことが重要だと思います。また、何といいましても人材養成が不可欠ですので、商品づくりと販売にかかわる部分の研修についてもこれから一緒に取り組んでいきたいと思っています。



先端的な組織体が必要


坂元 英俊氏

中山 お三方の話を聞きまして、伊豆の課題もいくつか出てきたと思います。その課題につきまして、坂元さん、アドバイスをいただけますか。

坂元 滞在にかかわっていこうという人たちの情報がいつも集まって来るような、そういう体制とそれを旅行商品として組み立てていくような先端的な組織体が必要だと思います。
 やはりプログラムだけでは滞在は出来ません。そこに住んでいる人たちも一緒になって、そのプログラムを応援しているような、そういう体制がないと、人が来てくれることによって自分たちも良くなっていくという関係性が出来てこないんです。だから住んでいる人たちにも何らかの経済的な波及効果につながっていくものも同時に進めていかないといけない。やはり掘り起こしの段階で人材を広域的に持っておいて、それがつながっていくということでしょうね。
 そして出したものをそのままパンフレットに載せてハイではなくて、それを少しずつ磨きながら、磨いたものを伊豆の魅力として出していくことによって、周りと比較しても「伊豆は良いよね」というところに仕上げていく。だから見せ方、伊豆というものはどんな特徴があって、こういうふうなものとして出していくと伊豆の魅力がもう1つ上乗せされて出てくるという、そういったものを考えていく中枢が人なのです。
 私たちがやっていくときには、こと細かく中に入ります。それをどうやって魅力的にしていくか見つけ出します。この作業をどこがするのか。組織体があって、そういうところまで細かく見てプロモーションをかけていく。旅行会社に届けていく。いろいろなものが必要になってくるので、伊豆というかなり広範な地域であるが故に観光協会ではとても間に合わないぐらいの仕事ですから、何十億円かけても財団を立ち上げるぐらいの気持ちでやった方がいいと思います。


人づくりは、人をいかに見つけ表舞台に引っ張り上げるかだ


中山 地域づくり、人材の育成は2つの課題がありまして、1つはプラットホームの部分で観光圏の事務局体制をどうしていったらよいのかということと、もう1つは鈴木さんからお話があったインストラクターですとか、お手伝いをしてくれる人たち、観光圏の中のプレーヤーをどうやって増やしていくかという問題だと思います。鈴木さん、どうすればプレーヤーを増やすことが出来るのでしょうか。

鈴木 人づくりは、地元の人が、「オレッチの場所が一番だよ」「最高だよ」と、こういうふうに思ってくれる人をいかに見つけ出して、いかに表舞台に引っ張り上げるか。ここだと僕らは思っています。本当に地元が好きな人、自分が生まれたこの町を自信を持って「ここ良いだろう」「この自然体験っていいだろう」と言える人をどんどん見つけていく。それが人が人を呼ぶんです。
 一度そういう人たちが体験指導者をしたときに、こう思うんですね。「俺もこんなにお客様に喜んでもらえる」「やる気になるな」と。いかに僕たちがこのきっかけ、チャンスを作り上げて、その場にそういう人たちを引っ張り出してくるか。ここだけだと思うんです。お客様の笑顔を見て良かったと思ってくれて、それがビジネスとしてちゃんとした稼ぎになるような、そういうシステム作りが出来ていれば、どんどん動いていくと思います。
 もう1つ、プラットホームという話がありましたが、ぜひ伊豆観光協会とか、そういう大きな組織を作っていただければ、情報の一元化ですとか、人の手配ですとか、うまいこと出来るようになると思うんです。大きな話だと思いますが、観光圏が動き始めたらそのような組織を作っていかないといけないと思います。


伊豆観光圏の新しいモデルを


石井 文弥氏

中山 石井さん、具体的には観光協会以外に、そのような新しい形でやっていった方がいいという話も出ているのですか。

石井 既存の組織を使わざるを得ないということも片方にはあるんですが、やはり機能の変化が起こっているのではないか。伊豆観光圏の新しいモデルとして新しいやり方で組織を作っていくのがいいんじゃないかと思います。2市3町の中を見ましても自然案内人ですとか、NPO、ボランティア団体など、非常に数多くあります。一般部門においては現場のプレーヤーはある程度育成されていますが、後方部門、事業の支援体制の機能がないのではと思うんです。多分、観光協会の今の体制では責任であるとか、安全であるとか、もう少し機能を変えないと対応しきれないと思います。
 伊豆全体の観光協会のようなものがあったら情報公開も一元化できるというお話がありましたが、これはおっしゃる通りだと思います。今、共同宣伝の体制としては伊豆観光推進協議会があり、13市町で続けていますが、財源的に限られていますから活動範囲が決まっているんです。
 この枠組みを大きく変えて、ゆくゆくは観光協会だけではなくて、伊豆半島はせいぜい60万人ぐらいの人口規模ですので市町の大合併が出来れば、民間のレベルまで統一的な意思決定の即時性も生まれてくるのではないかと思います。ただこれはいつになるか分かりません。伊豆観光圏に限って言えば、ここが1つの起爆剤として、圏域に余りこだわらなくていいと思っています。認定のエリアや行政のエリアがどうのこうのというのは、遊ぶときには関係ないんです。自分が好きなものを選んで、そこに遊びに行けばいいのですから、そういった意味でのコラボレーションはいくらでも出来ると思うんです。ですから、そういう展開がぜひできるようにして、伊豆半島全域が共通項で1つの成果が出せるような方向に持っていければいいなと思っています。


観光圏とあわせジオパークも進めることは伊豆地域にとって大きなプラス


中山 渡井さん、県内には浜名湖にも観光圏がありますし、熱海は箱根と一緒にやるわけですが、静岡県の期待しているやり方とかありましたらお願いします。

渡井 浜名湖観光圏は周辺市町村が合併して大半は浜松市になり、プラス湖西市ということですので、比較的地域がまとまりやすいということがあります。また、神奈川県の方も同時に認定を受けたばかりなので、まだ動きはないようです。
 この伊豆地域のきっかけの一つとして、地元の6市6町の市長、町長さんたちがジオパークを中心にすると2月に決定をされまして、今度はこの中に分科会を設けて具体的に進めていくと。県でもジオパークの認定に向けてテーマとなるストーリーとか、ジオパークの候補とか、いろいろな仕組みを考えています。このジオパークを進めていくことは、具体的な事務局体制につながるものではありませんが、こうした地域の誇りを掘り起こして、具体的に地域を語れる人材育成につながるものになるのではないかと思いますので、観光圏とあわせながらジオパークも進めることは伊豆地域にとって大きなプラスになるのではないかと思っています。


ジオパークには人とのかかわり、文化、歴史が重要


中山 ジオパークの先輩として坂元さん、いかがですか。

坂元 ジオパークに取り組む時に私たちは地形・地質ばかりみていたんです。世界最大級のカルデラを持って今でも活動している火山があるということで組み立てようとしたら、いや、それは当たり前のように存在するものであって、そこに人のかかわりがどれだけあって、そこでどういう文化や歴史が育まれてきたのかということの方が重要なんですよと言われたのです。
 そこをやることによって、実は話すことがたくさん生まれてくるんです。そのことが案内人を育成していく大きな地域のポイントにもなっていくし、地域の人たちが自分のところを知る、「あ、こんなところに住んでいたのか」ということが良く分かるように変わるんです。
 阿蘇の火口に水がたまっています。私たちは雨水がたまっていると思ったのですが、あれをジオ的に見ると毎日噴き上がっていくマグマの蒸気が実は冷やされてあそこにたまる。水がたまっていることそのものが奇跡なんですよという話なんです。しかも蒸気に含まれている成分によって、緑色になったり青色になったりしていく。そういうことを知るとあの水たまりが本当に貴重なものに見えてくる。それが実はジオパークの1つの見方なんです。
 古代から火口の水が干上がっていくと火山活動が活発になって小さな噴火をしていくわけです。阿蘇神社の宮司さんが毎年御幣を中に入れて、阿蘇が大きな爆発をしないようにとお祭りをしてきました。そういったものが人と自然とが一体化した歴史の中に繰り込まれている。そこに大きな価値が生まれてくる。
 そういったものは多分、伊豆半島にもたくさん散らばっていて、それを解明していくことが、自分たちが住んでいる伊豆という地域が山側にしても海側にしても実は貴重な地形、地質資源と魚でもこんな魚が捕れるという魚礁というか、そういったものを作り上げてきた本当に大きなものだったんだということが分かると、そのことを訪れた人に話をして、だから魚がうまいということにつながってくる。これはジオが生かされてくるわけです。そういうものにつながっていくと1つの商品が大きく実を結んできます。
 阿蘇では、お米を全部湧(ゆう)水で作っているので、ジオ米と呼んでいます。世界ジオパークに認定されたところで作っているお米だから、世界ジオパーク認定マークのついたお米が阿蘇で売れる。そういう産業的な付加価値まで考えて商品作りをする。それもオーケーなんです。だからジオパークというのは自然の美しさや良さだけではなくて、産業的なものを生み出す大きなけん引力にもなると思います。


持っているノウハウ全て 皆さんのところに出すつもり


鈴木 達志氏

中山 鈴木さんは茅ヶ崎出身で、5年前にこちらに移られたのですが、われわれが気づかない伊豆の魅力がたくさんあると思うんですが・・・。

鈴木 私が西伊豆に移住してきて一番最初に驚いたのは宝の山だということでした。地元の人にとってはあって当たり前のことが私たちにとっては、「これは何だろう」「あれは何だろう」と。この崖(がけ)はなんだろうとか、どうしてこの植物はここにあるんだろうとか、これがジオなんですね。この間もある方に言われたんです。ジオツーリズムを説明してくれと。私が毎回、お客様のガイドをしている中でお話ししていることがジオツーリズムの1つなんです。なぜ駿河湾の魚が美味しいのか。駿河湾は岸からちょっと行くとあっという間に80メートル、120メートルの深さがあるんです。そういう海底から湧(わ)き上がる水で魚が美味しくなる。このことを1つ話すだけでお客様は振り向いてくれます。
 西伊豆町の山の中を歩いていくとブナの原生林が残っていたりします。私たちはこういうところも宝の山だと思っています。なぜここにブナが残されているのか。お客様と一緒に歩きながら常に考えているんです。答えを私たちが言うのは簡単なんですが、必ず私はお客様に「これはどうしてでしょうね」と疑問の投げかけをします。そしてお客様との言葉のキャッチボールを楽しみながらジオの方に持っていくようにしています。
 私たちが作っているプログラムでいろいろなノウハウが多分あると思うんです。このノウハウは今の時代、自分のものにしておくのはもったいないと考えています。いろいろな場所に多分私のような人間がいっぱいいると思うんです。その人たちが何年、何十年掛かって作り上げたプログラムとか、アイデアとか、これは出し惜しみをする時代は終わっていて、もちろん私が持っているノウハウ全て皆さんのところに出すつもりでいます。そういうことをやっていくとプログラムがどんどん生まれてくるし、逆にいうと一瞬のうちに技術、レベルが底上げされますので、私もノウハウを出しますので使ってください、というようなことでプログラム化を進めております。


地域づくりのための観光こそが、観光圏の基盤を強化


中山 最後に一言ずつ伊豆観光圏について、お願いできますか。

石井 私は地域繁栄有限会社といいますか、そういった視点でとらえていった方がいいのかなと。ボランティア型のやり方も、または市に直結したやり方もあると思いますが、やはり地域繁栄会社、こういった視点で観光圏がこれからの新しいスタイルになっていけばいいのかなと考えています。

渡井 私は伊豆観光圏が伊豆は1つというキーワードで結びつく絶好のチャンスだと思っています。伊豆観光圏、伊豆は1つということで突き進んでいけたらなと考えています。

鈴木 やはり人材だと思いますが、この伊豆だけではなくて県内のいろいろな業種の皆さんが、今頑張っていますので、ぜひ伊豆を振興するならば、ほかの地域もよく見てきて、深く学ぶということが必要ではないかと思います。

坂元 伊豆観光圏の特徴は、素晴らしいものを作っていく、その手段があるということなんですね。それを作っていこうということなんです。伊豆まるごと周遊企画戦略集団、略称伊豆丸というふうに言われているんですが、こういったところが地域と人材なり、プランを掘り起こしていって企画していく。もう一つ伊豆観光圏のツアーセンターを作って、そこが商品販売などを作り上げていくという役割を担っていけるんですね。だから商品を作り上げていく地元の企画集団とその製品を商品化して販売していくという、こういうものが一体化した形で、組織化されていくとかなり強力なものが出来ると思います。観光圏の中にすでにそういう概念を入れて、申請するなり、これからの展開の本番となるので、これが伊豆を全体的にまとめていく実質的な体制になっていくのではないかと思われます。この部分をさらに強化していけばいいんじゃないかと思います。

中山 時間がまいりました。新しい考えというのでしょうか。地域づくりのための観光こそが、その観光圏の基盤を強化していくという形になると思います。ですので、地域産業が元気を取り戻す。そして地域住民が誇りを持って楽しく暮らせる。そうすることによって地域の魅力が増す。そして地域の魅力が増せば多くの観光客を呼ぶことが出来る。そうすることによって伊豆地域の産業がまた発展してくる。「海から山へ、そして温泉〜海洋温泉ストーリー伊豆」というのが観光圏のテーマです。着実に実行していただきたいと思います。

 
< コーディネーター >

◇中山 勝(なかやま まさる)
スルガ銀行入行後、1982年企業経営研究所出向。研究員、主席研究員を経て2000年部長、08年常務理事。静岡県、沼津市、三島市などの委員や日本大国際関係学部非常勤講師などを務める。サンフロント21懇話会TESS研究員。1958年生まれ。長泉町在住。慶応大大学院経営管理研究科修了。

< パネリスト >

◇石井 文弥(いしい ふみや)
1972年東海自動車入社。総務部長、自動車営業部長、事業部長などを歴任。現在専務取締役。2007年伊東観光協会長。1949年生まれ。伊東市富戸在住。明治大部卒。

◇鈴木 達志(すずき たつし)
1999年アウトドア体験プログラム企画・運営会社を設立。2005年西伊豆へ移住し、伊豆グリーン・ツーリズム協会代表として伊豆全域のグリーン・ツーリズム指導者育成、活動の促進、地域活性化プロジェクトのコーディネーターとして活動中。08年伊豆体験型観光協議会を、また09年西伊豆いきいき漁村活性化協議会をそれぞれ設立。1964年生まれ。神奈川県茅ケ崎市出身。

◇渡井 務(わたい つとむ)
1975年静岡県庁入庁。商工労働企画課、生活文化管理室などを経て2001年〜05年空港局空港部で静岡空港の路線誘致や利活用策を担当。現在、文化・観光部観光局長。1952年生まれ。富士宮市在住。東京経済大卒。


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