サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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寄稿
2006年政局展望

共同通信政治部長 吉田 文和氏

吉田文和氏

  2006年の二大政治テーマは自民党総裁選と民主党代表選。いずれも九月に実施される予定で次の「党の顔」をめぐり既に水面下で駆け引きが始まっている。自民党内では小泉路線の継承を前提に「改革競争」が主調音となっているが、変転極まりない政治の世界だけに予断は許さない。民主党の前原体制も盤石とは言えず、路線論争が燃え上がる可能性は否定できない。2000年代初頭の政界覇権を目指し両党同時進行でサバイバルレースが繰り広げられそうだ。
 五年近い長期政権ながら小泉政権の内閣支持率は50%を超え、首相の指導力が衰える気配はみじんも見えない。1987年の総裁レースで後継者を指名した中曽根康弘元首相を上回る権勢を誇っている。首相の背後には党内最大勢力の小泉チルドレンが控え、首相の動向次第で一気に総裁選の流れが決する勢いを維持している。
 問題は首相の意中の人だ。最近森喜朗前首相が、次の次まで安倍晋三官房長官を温存したいと表明すると、首相は直ちに「逃げては駄目だ」と反論した。これは注目される。官房長官に起用した時点で、首相見習いとの観測がささやかれたが、決起を促す発言は首相が安倍氏に大きく傾斜していることを示唆したからだ。首相自身は、戦いを制してトップに立たなければ権威は確立しないとの考えといわれ、安倍氏が自らはい上がってくることを期待している。後見役の中川秀直政調会長も、総裁選直前に最も国民的な期待が集まる候補が総裁に選出されるだろうと予言し、安倍人気で押しまくる構えだ。参院選を翌年に控える参院側に安倍待望論が高まっているのも有利な条件で、流れが固まれば首相は自然体で安倍氏への継承を果たせる。
 しかし安倍氏に死角がないわけではない。経済情勢の変転や不祥事などにより小泉首相の求心力が激減し小泉離れが急進するような不測の事態が起きるケースだ。安倍氏の強みは「国民的人気」と共に小泉路線の継承にある。首相と運命共同体だけに反動の直撃を受けるのは安倍氏となる。潜伏状態の非・反小泉勢力が息を吹き返し、首相に対し是々非々で臨んでいる福田康夫元官房長官らのもとに結集―。決して可能性は高くはないが、一寸先は闇の政界だけにこうした構図も想定しておくべきだろう。
 麻生太郎外相、谷垣禎一財務相は派閥の力不足、人気不足から基本的には禅譲路線を追求するしか選択肢はない。ポスト小泉のワンポイント登板に活路を見いだす戦略だろう。何も負け覚悟の2007年参院選にぶつけるべきではないとの安倍温存論が党内世論となるかどうかが見どころだ。
 一方、民主党は、前原誠司代表の対自民戦略が軌道に乗らず低迷が続いている。対案路線を打ち出したものの、与党との違いがぼやけると党内から疑問が噴出。さらに訪米中に打ち出した安保政策に旧社会党系が厳しく反発し、寄せ集め体質を克服するのがいかに難しいか浮き彫りになった。民主党の課題は二つ、選挙を戦える組織への脱皮、自民党に対抗しうる政策の明確化に尽きる。前原氏は労組依存の脱却など党体質の改善を目指しているが、身内偏重など党運営の面でつまずいているようだ。通常国会の論戦や春の統一補選で力量を証明できなければ、体制刷新の動きが表面化してくる可能性は否定できない。
 政策面の緊急課題も山積している。「中央対地方」「勝ち組対負け組」など各方面の格差拡大は許容範囲を超えつつある。景気回復と財政再建という重要課題に取り組むため、国民の合意と協力を取り付ける努力が今ほど政治に求められているときはない。首相の靖国神社参拝により傷ついた日本外交の建て直しも急務だ。政権トップの選択は、日本の針路選択と直結することをかみしめ、地に足をつけた政治運営と冷静で厳しい視線を国民が政治に注ぐことが必要だ。



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