ブランド化するということは、その商品に名前とか、言葉とか、シンボルをつけることです。そしてブランド化によって他社の製品と差別化していくというところがブランド戦略の基本です。
ところで、各地にお邪魔すると「これ、美味しいでしょう。良いでしょう」と言われます。しかし「美味しい。良い」というのは当たり前の基本的な価値です。モノの価値というのは基本的に丈夫で安全、美味しいだけではなくて、生産者の情報、生産地の情報、モノによってはデザインの魅力といったような情報的価値、さらに言えば地域の風土やイメージ、信頼や安全のイメージといったものを付けて、ブランド力がつくといいます。このように価値をつけていく作業がブランド化の重要な作業だと思っています。
世の中にはマスプロダクションの大手の商品がたくさんあり、地方の生産者は、それに対してコストや高機能ではかないません。その時に、モノのブランド化だけではなくて地域イメージのブランド化で勝負するというのが、この地域ブランドのミソだと思います。
例えば高知県の馬路村は1100人の村です。そこの農協が一丸となってゆずを使ったポン酢やジュースを作っています。従業員が70人、売上高が33億円の加工業になっています。彼らは馬路村のポン酢ということで売っており、ミツカンやキッコーマンと戦っているわけです。単純にコストや品質やバリエーションだったら大手にかなうわけがないわけですが、そこでなぜ30億円も売れ、スーパーの棚でミツカンの上の段に置いてもらっているのか。それは「馬路村です」というイメージをうまくつけて売っているからです。
今、地域ブランドは大変注目を浴びています。一つは安全、健康などに本当に関心が高い。また一方では食の安全問題などで不祥事が起きていること。それから経済のグローバル化、つまり安くていいものは残念ながら海外から入ってきます。国内の商品は良くて高いものです。そういう発想でものを作っていくということです。それから宅配便やインターネットの整備で生産者が作ったものを消費者に直接売ることができるようになりました。地域ブランドは「私が作りました」ということを伝えることが必要ですし、その手法は今日、誰でも使えるようになっています。そして商品、サービスをどんどん改良していくことと地域イメージを上げていくことで地域ブランドは成功していく。いい循環を作っていこうということです。
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